第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第1話 出会い
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「参ったなあ……」
ここは幻想郷にある迷いの竹林と呼ばれる所である。そこでとある人間の少女は窮地に立たされていた。
彼女の目の前には妖怪がいるのだ。基本的に妖怪は人間を襲うものである。だからこの少女は純粋に危機に陥っているのだ。
勿論、何の対策も無しに妖怪の蔓延る竹林の中へと飛び込むような真似はこの少女はしたりはしない。
だが彼女は案内役の竹林に精通した兎の少女と一緒にいたのだが、いつの間にかはぐれてしまったのだ。運が悪かったのだ。
「あなたは食べられる人類?」
そんな不運な人間の少女を嘲笑うかのように、妖怪の少女は無邪気な笑顔を見せながら迫っていたのだった。
◇ ◇ ◇
「それじゃあね、依姫。私はレイセンと一緒に一足早く月に帰っているわ。月の護りは私と玉兎に任せておいてね」
暫しの別れの為に、綿月豊姫が妹の依姫に告げる。
「ありがとうございますお姉様。私の我がままを聞いて頂いて」
それに依姫は返す。しかしどこか申し訳なさそうな様子だ。
依姫のその様子を見て豊姫は言う。
「もう、水臭いわね、依姫は。私達姉妹じゃないの」
「……」
豊姫にそう言われても依姫は釈然としないようだ。
それは依姫の性格上『家族』とか『兄弟姉妹』といった概念を、物事を推し進める為の武器には使いたくないというものからであった。依姫は家族といったものを本当に大切する為、それを利用する事は避けたかったのだ。
豊姫もそれはわかっているのだ。だが敢えて彼女は付け加える。
「安心してね依姫。元より私の『能力』があれば月と地上の行き来は容易なのよ。だから月に残るべきなのは依姫より私の方なの」
そう言うと豊姫はにっこりと微笑んだ。
「それに依姫。貴方は私よりも『地上で』やりたい事が沢山あるんでしょ?」
そう、綿月姉妹は今地上にいるのだ。
細かく言うと、地上の幻想郷と呼ばれる場所に存在する八意が蓬莱山輝夜と共に統括する『永遠亭』が居を構える『迷いの竹林』の中に二人はいるのだった。
まず姉妹は永遠亭に玉兎のレイセンを偵察に行かせて、危険性がない事を確かめたのだ。尤も、レイセンがその事をものの見事に永遠亭の住人に漏らしてしまい計画もへったくれもなくなっていたのだが。
そして危険性がないと判断した姉妹はレイセンと一緒にかつての師である八意や、最初の『レイセン』である鈴仙・優曇華院・イナバ達といった永遠亭に住まう者達との憩いのひとときを過ごしたのだ。
だが、月の守護者がいつまでも不在では大問題であろう。だから豊姫はレイセンを連れて再び月まで戻るのだ。
しかし、依姫は暫くの間地上に残る事を決意したのだ。と言っても永い年月をずっと過ごす訳ではないから、地上の穢れにより寿命を持ってしまう心配はないのである。
「
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