第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第1話 出会い
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る。
その口振りから、あの出来事はあらかた永琳の読み通りになったようだ。
「そうですよね……」
依姫はそう言い、一息置き、
「それなら、些か酷だったのではありませんか? 私にあの者達に対してスペルカード戦で勝ち抜く事を要求するなんて」
と、締め括った。
それに対して永琳は。
「あら、貴方なら出来て当然でしょ」
そう平然と憮然として言ってのけたのだ。
「八意様、貴方ってお方は……」
依姫はそんなふてぶてしい物言いをした永琳に暫し呆気に取られてしまうが……。
「やはり八意様には敵いませんね」
と、微笑んで見せたのだ。
今の永琳の発言は寛大にも取れるだろう。だが、その中に自分への信頼がある事を依姫は感じ取っての事であった。
「話はこれで済んだかしら?」
「はい、お陰様で」
「それは良かったわ、それじゃあ夕食まで部屋でゆっくりしていてね」
「ありがとうございます」
そして依姫は第二の我が家の自分の部屋へと向かっていったのだ。
◇ ◇ ◇
永遠亭で自分に割り当てられた部屋で、依姫は暫しの休憩だとくつろいでいた。
そこは快適であった。月の民の地上への差別意識は未だ蔓延しているが、決して思っているような忌まわしい場所ではない事をもっと地上と触れ合い学び、そして月へと伝えていかなければいけないと依姫は想いに耽っていた。
そんな黄昏に浸っていると、その風情をぶち破る事が起こった。部屋をノックする音が聞こえてきたのだ。
「はい」
何事かと依姫は部屋の入り口の襖へと向かい、引き開けた。
「少しいいかしら?」
そこには永琳がいたのだ。
「如何なさいましたか、八意様?」
夕食まではまだ時間がある筈。依姫は疑問に思い聞いた。
「ちょっと、てゐの帰りが遅いから迎えに行って欲しいのよ」
「てゐがですか……」
『因幡てゐ』永琳が今帰りを待っている存在であった。彼女は永遠亭に住み地上の兎達を束ねている妖怪兎である。
依姫にはまだ馴染みの薄い存在であったが、これから永遠亭に関わる事を考えれば立派な『家族』である。
「分かりました」
だから依姫は快くてゐの迎えを引き受けたのだ。
「悪いわね、私もウドンゲも他の兎達も夕食の準備で手が話せないのよ」
「お構いなく」
ウドンゲとは嘗て依姫の元で訓練を受けた『初代レイセン』である、鈴仙・優曇華院・イナバの事である。
そして永琳が蓬莱山輝夜の事を持ち出さなかったのを突っ込まない情けを依姫も持っていたのだ。「あのニート……」と心の中で思いながらも決して口には出さなかった。
◇ ◇ ◇
「そろそろ、てゐがいる場所かしらね」
依姫はそう呟きながら竹林の中を練り歩いていた。
さすがの依姫でも何も準備なしではこの竹林では迷ってし
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