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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
緋神の巫女と魔剣《デュランダル》 IV
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を蹴った。銀髪は逆風に靡き、蒼玉の瞳は氷華の如く凍てついている。

先程の動揺など嘘のようで、その瞳は感情を押し殺したような色をしていた。……だけど、それは簡単には拭えないはずだ。

ものの数歩で肉薄してきたジャンヌは、およそ鈍器のような重量を誇るそれを下袈裟型に振るう。初動の様子見、当たれば御の字というところだろうか。当たるつもりも、毛頭ないのだが。

無慈悲で冷徹な、虚空を斬り裂く音色が聞こえた。喉元に薙がれた西洋大剣の切っ先を、右脚を半歩引いて避ける。
彼女もそれは予想済みだろう。そのまま大剣の重心を活かし、流動的な足取りで、片手で柄を握りながら右回りに回転した。
軌道は──《明鏡止水》のおかげで視える。頸動脈を一閃。

《緋想》で鍔迫り合いに持ち込んでも、そもそも武器の選択で作戦負け。幅広の大剣と細身の日本刀ではこちらが不利。
そんな時の為に、あの2人に後方支援を任せたのだ。


「さっ、頼むよ」


笑み、片腕を掲げる。ジャンヌが訝しむのも束の間、背後からは硝煙と銃撃が立ち込めた。発砲音で類推するに、アリアの二丁拳銃が2発。キンジのベレッタが3点バーストだろう。
そして、その類推は確信へと変貌する。


「……煩わしい奴らだ」


キンジの放った9mmパラベラム弾は、単なる意識逸らしのブラフに過ぎない。本命こそが、アリアの .45ACP弾だ。
2発は的確にジャンヌの腕を狙っている。動いている極小の的を射るのは大道芸じみた技術だけれども、アリアなら可能だ。
……ただ、当たるか当たらないかが問題なだけで。

虚空を裂く2弾は右螺旋回転を維持しながら、柄を握るジャンヌの両手から両腕までを射程視野に入れている。
その全てを防ぐには、この肉薄した2人の距離間では困難だ。だから彼女は、即座にバックステップで間合いを取って──、


「斬り落としてしまえば問題なかろう?」


──地に脚を着ける前に、大剣を横凪ぎに振るった。
それは直前まで、ジャンヌ・ダルク30世という人間が存在していた空間。今となっては虚実であり空虚である、其処(そこ)。見事に両断された.45ACP弾は累乗数的に分散し、そのまま壁を抉り廻ってゆく。


「「斬った!?」」


背後でアリアとキンジが狼狽する声が聞こえた。
そう、それこそが最善手なのだ。とはいえ非常に高度な技量を要する芸当である以上は、それなりの実力者とみれる。
早期にこの闘いを終わらせられれば彼女としては僥倖といったところだろうが、そうは問屋が卸さないってところかな。


「アリア、キンジ。そんなことで驚いてちゃ、この先に対応できないよ。キンジはまだしも、アリアは
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