第六十七話 天空への塔
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ったのだろう? なら、何の問題もないのでは」
「ええ。しかしそのような力を持つ存在というだけで既に警戒に値します。未知数という点において、彼女は勇者以上の脅威に値するのですから」
「そうか。なら対処は引き続きお前に任せるとしよう。私はこれから信者の元へ行かなくてはならないのでな」
そう言ってイブールは姿を消した。
自分以外誰もいなくなった部屋でゲマは思案していた。
「大量の魔物ですが、果たしてそれでも戦力になるかどうかーー」
あの8年前のグランバニア襲撃も、結局は大量の魔物を投入したが結果は痛み分けという形で終わった。いや、結局勇者は誕生しアベルの石化も解かれた事を考慮すると痛み分けどころかこちらの損失の方が大きい。
ならどうするか。大掛かりな魔物の改造は時間が年単位でかかる。
しばらく考えをらせていたが、ゲマはある事を思いついた。
「ああ、使える駒が丁度ありましたね」
そして邪教の使徒はその表情を邪悪な悦びに染め上げる。
彼は転移魔法を使い、ある場所に移動すると禁断の儀式を始めた。
それは究極の冒涜にして畜生の行いだったが、この外道にとってはそれすらも快楽なのだ。
「さぁ、これをお披露目したいですからね。簡単に死なないでくださいよ?」
新たな手駒を眺めながら、ゲマはそう呟いた。
長老から新たな情報を貰い、目的地である天空への塔に辿り着いたのだがそこはひどい有様だった。
かつては清浄に管理された建物であったのだろうが、その面影は一欠片もない。
それは建物が朽ち果てているというだけではなく、魔物が大量に生息しているという意味でもあった。
しばらくの間探索を続け何度か魔物と交戦したが、新たに異常な点を発見した。
「アベル、気づいてる? ここの魔物の様子のおかしさに」
「……ここの魔物はただ、獰猛だったり手強いというだけじゃない。明らかに自分の命よりも僕達を殺すことを優先させている」
魔物というのは一応野生生物である以上、勝てない敵に対しては逃げるという選択肢を取る。ただここの魔物はそういった行動はない。どれだけ呪文や武器で手傷を与えても、それどころか致命傷を与えても、動けなくなるまで私達を殺そうとするのを辞めようとしない。
実力を度外視して襲いかかってくる魔物と戦ったことが無い訳じゃない。だがそういった魔物は流石に大きな手傷を与えれば逃走の姿勢は見せたし、致命傷を与えればまだ息があっても戦闘を続行しようとしなかった。
「やっぱり光の教団が関わってるとしか思えないわね」
前々から魔物の凶暴化が進んでいると思っていたが、まさかここまでとは。
「もはや生存本能が機能しなくなるまでに、殺戮衝動に支配されていると思うと哀れとしか言いようがありませんな」
剣を研ぎながら
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