後編
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風花さんも不思議そうに言いました。
「それについては理解しています。それでも、常識を超えた何かが起きていると推測されるであります。」
話している間にも、(こんなことをしている状況ではない。一刻も早くスピカさんのところに行かなければならない。)という焦燥感が募っていきます。
「危険な状況の可能性があります。至急確認が必要であります。・・・それに・・・」
ついにこらえきれないものに突き動かされて、私は走行中のワゴン車のスライドドアを力まかせにこじ開けました。
隣にいる風花さんが悲鳴をあげ、順平さんが「あぶねえ!」と叫んだであります。車内には警告音が響いています。
「それに、スピカさんは私のお友達であります。」
「まて、アイギス」という美鶴さんの声を背に、私は車内から飛び出しました。数回、路面を蹴ってバランスを取り、車としばらく並走した後、対向車線に移って元来た道をまっしぐらに引き返したのであります。
会場に駆け戻ると、入り口のロックを引きちぎり、私はスピカさんのもとへと走りました。。
建物内のほとんどの人は帰宅したらしく、一部を除いて照明は消えており、私は暗視モードに切り替えました。やがて明かりのついているスピカさんのエリアにたどり着くと、スピカさんのまわりには技師が4人集まっていたであります。
「アイギスです。戻ってきたであります。」
私が声をかけると、みんな驚いた様子で一斉に振り返り、山村さんが「アイギスさん?どうしてここに?」と声を上げました。
近づいてみると、スピカさんの前で和久田さんが床にうずくまり、ガクガクと震えていたであります。
スピカさんは私に気づいた様子もなく、表情は固まったように動かず、ただその口からちいさく「アイギスさん・・・アイギスさん・・・」と繰り返す声が聞こえています。とても正常な状態とは言えません。
しかし・・・そちらも非常に気にはなるのですが、まずは和久田さんの状態の確認が優先であります。
「和久田さんは、どうかしたでありますか? 持病の癪でしょうか?」
私が訊くと、「スピカの異常を調整しようとしているうちに、急にこうなってしまって・・・。」と山村さんが返しました。
「様子がただごとじゃない。救急車を呼んだ方がいい。」と別の男性が言いました。「そうだな。すぐに手配してくれ。」と山村さんはそう指示をして、それから「ところで桐条さんは?」と私に聞いてきました。
それに答えようとしたタイミングで、いきなり全ての照明が消えて真っ暗になりました。同時に、私は周囲の異常な状況変化を認識しました。
山村さんも周りの技師達も、いきなり棺に姿を変えたのであります。これは象徴化という現象・・・影時間の特徴であります。
しかし和久田さんだけは象徴化せず、相変わらずうずくまったまま震えています。むしろ、これこそ
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