第八十一話 張飛、陳宮を庇うのことその九
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その中でだ。関羽が義妹を止めようとしてきた。
「鈴々、それは」
「待って、愛紗ちゃん」
言おうとする彼女をだ。劉備が制止した。
「ここは」
「姉者、それでは」
「ええ、任せましょう」
微笑んでだ。次妹に言うのだった。
「鈴々ちゃんにね」
「わかりました。姉上がそう仰るのなら」
関羽もここは沈黙することにした。そうしてであった。
彼女も沈黙を守った。そうしたのだ。
今は皆張飛の言葉を見守る。彼女はさらに言った。
「陳宮を見るのだ!」
「見るって!?」
「そうなのだ、今泣いているのだ」
その通りだった。その目は涙ぐんでいる。
「この涙が何よりの証拠なのだ。陳宮は嘘を言っていないのだ!」
「涙を」
「そうなのだ。御前も見るのだ!」
陳宮を指差しながら。荀ケに言うのである。
「この涙。どう思うのだ!」
「私だってね。華琳様の筆頭軍師よ」
その誇りに基いてだというのだ。
「多くの人材を見極めてきているのよ」
「ならわかる筈なのだ」
「ええ、じゃあ見させてもらうわよ」
半ば売り言葉に買い言葉であった。そのうえでだ。
荀ケは陳宮のその目を見る。その涙をだ。
その目をじっと見てだ。そうしてだ。その澄んだ真剣なものを見てだ。
唇を一旦噛み締めてだ。それから張飛に答えた。
「わかったわよ」
「ではどうなのだ」
「この娘は嘘を吐いていないわ」
そのことがだ。荀ケにもわかったのだ。
「間違いないわ」
「その通りなのだ。陳宮は嘘を吐いていないのだ」
「じゃあやっぱり」
「鈴々は戦は好きなのだ」
今度はこのことを話す張飛だった。
「けれど戦うべきでない相手、戦う必要のない戦はしないのだ」
「それが今だっていうのね」
「その通りなのだ」
こう言うのだった。
「鈴々達の敵はそのオロカとやらなのだ」
「オロチな」
草薙が張飛の言い間違いを指摘する。
「そこは覚えてくれよ」
「わかったのだ。オソイなのだ」
「だからオロチな」
このやり取りはした。しかしだった。
張飛のだ。その言葉を聞いてだ。
最初にだ。孫策が言った。
「そうね。人を見極められなくてはお話にならないわね」
「その通りじゃな」
黄蓋も己の主のその言葉に頷く。
「少なくともこの陳宮は嘘を言う者ではない」
「いい娘ね」
孫策はその陳宮を見て微笑みもした。
「軍師としてはまだまだ未熟みたいだけれど」
「それはこれからじゃな」
黄蓋も陳宮の軍師としての力量は見抜いた。それでもだった。
少なくとも陳宮は信頼された。そのうえでだった。
軍議が再開された。袁紹はあらためて一同に述べた。
「では。総攻撃は見送りますわ」
「そうするのね」
曹操も袁紹のその言葉に頷いた
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