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戦国異伝供書
第七十九話 初陣その四

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「よいな」
「わかり申した」
「それよりも政じゃ、当家はまだ小さく」
 国親は今度は調子壁家自体の話をした。
「それにより兵も少ない」
「この土佐の中では」
「ごく小さな家じゃな」
「一番大きな家は一条家ですな」
「西のな、後はもう小さな家ばかりでな」
「当家もその家々のうちの一つですな」
「それに過ぎぬ、だからじゃ」
 それ故にというのだ。
「まずは政によってな」
「領地をよく治め豊かにする」
「それはわしも行なっているが」
「それがしもですな」
「よく治めよ、多少無理をしてでも兵を多く置かねばならぬ」
「そしてその多くの兵で」
「他の家を攻めるか圧倒してな」
 その様にしてというのだ。
「降していくのじゃ」
「その為にも多くの兵が必要ですな」
「左様、年貢を高くしても」
「それは仕方ないですか」
「そうじゃ、このままではどうにもならぬからな」
 多くの兵を備えその兵達で他の家を圧しそのうえで土佐ひいては四国を手中に収めなければならないからだというのだ。
「だからじゃ」
「無理は承知として」
「年貢を高くし兵もな」
「多く備える」
「その為の政をせよ、よいな」
「わかり申した」
 元親は父のその言葉に頷いて応えた。
「それがしもまた」
「そこは頼むぞ、ただ年貢は高く兵を多くしてもな」
「領地自体はですな」
「しかと治めよ、この土佐は治めればな」
「豊かになりますな」
「田畑も街もな」
 その両方がというのだ。
「よくなる、しかも南には海もある」
「海の幸も多く手に入りますな」
「長く流刑地になっておったが」 
 それでもというのだ。
「川つまり水にも恵まれていてな」
「よい田畑を多く持てますな」
「それでかなりの米や他の作物が採れる」
「だからこそ」
「しかと治めればな」
「かなり豊かになりますな」
「我等の領地も同じじゃ」 
 今現在の長曾我部家のそこもというのだ。
「土佐の真ん中にあってな」
「川もあり」
「豊かになるぞ、川は堤をしっかりと築いてな」
「乱れを防ぎ」
「そのことも忘れるでないぞ」
「川が氾濫すればそれだけで田畑も街も流されます」
「そうなるからな」
 だからだというのだ。
「よいな」
「そこも忘れませぬ」
「そして道も築けば」
 土佐の中にというのだ。
「人の行き来も楽になり多くなりな」
「それで、ですな」
「やはり豊かになる」
「豊かな国になることは間違いないですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「だからじゃ、よいな」
「政のことしかと心得ました」
「宜しく頼むぞ」
「わかり申した」
 元親の返事は強いものだった。
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