中編
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イギスが答えます。
「スピカさんは自分が人間ではないことを自覚しているでありますか。」
唐突にアイギスがそんな質問しました。きわどい質問に、一瞬、場の雰囲気が凍り付きます。
「はい、私はロボットです。話をするロボットなので『スピーカー』から取って『スピカ』と名付けられました。アイギスさんもロボットなのですか?」
「はい。」
アイギスが即答します。一同、何を言い出すのかとギクッとしましたが、付き添いの技師は笑っています。冗談だと思ったのでしょう。
アイギスがロボットであることは、ここの人たちは当然知りません。金髪碧眼の容姿なので、外国人留学生だという風に紹介してあります。今日は月光館の制服を着て来ていまし、どこからみても人間にしか見えません。
「それじゃあ、私と同じですね。お友達になれるでしょうか。」
「はい。初めての、ロボットのお友達であります。」
「とてもうれしいです。」
「うれしいですか? うれしいとどんな感じがするのでしょうか。」
アイギスが興味深そうに尋ねました。
「笑いたくなるような、体が浮き上がるような、そんな感じになります。」
スピカの答えを聞いて、アイギスは「なるほどなー。」といった後、少し考えるように口をつぐむみ、それから「それならば、私もうれしいであります。」と答えました。
そしてアイギスとスピカは顔を見合わせて笑みを浮かべました。
それが、私にはまるで本当に気持ちが通じ合っているかのように見えました。
「見事なものですね。」
桐条先輩が感心したように言いました。
「アイギスが突拍子もない質問をしたのに対しても、実に自然な流れで会話を続けた。」
「まあ、こういう催しものだと、わざととんでもない会話を振ってくる人がいるものですから・・・。たいていのことには対応できますし、本当に困れば『私にはわかりません』と答える逃げ道も作ってあります。」
山村さんが答えました。
「いや、あまり素晴らしいので、思いのほか長い時間過ごしてしまいました。展示会でお疲れのところ、遅くまでお付き合いいただいて申し訳ありませんでした」
「とんでもない。気になさらないでください。実のところ、私たちの取り組みは金食い虫ですので、グループ党首のお嬢様にご理解いただくことは願ったりなのですよ。」
山村さんはあっけらかんと笑ってそう言いました。
その後、山村さんに見送られて、私たちは車で会場を後にしました。
「感じのいい方でしたね。」と私が言うと、
「まあ、技術屋というより政治屋だな。最後に言っていたことが本音だろう。しかし、ああいう人物がいないと、技術的プロジェクトというものはなかなか進まないものだ。」と桐条先輩が答えました。
それからアイギスに「どうだった?アイギス。満足したか?」と訊きました。
「はい。初めて同じ
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