揺籃編
第十三話 エル・ファシルの奇跡(中)
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系の防衛について責任を持つのは軍です。今の場合は警備艦隊です。その責任を果たせなくなったとき、どうしますか」
「当然、撤退するだろうね。民間人を連れて」
「ですよね。それに責任を果たせたとしても、避難が必要な場合はあります。警備艦隊が何も考えてないのはまずいのでは?と第2分艦隊は判断しました。ダウニー分艦隊司令の老婆心ですよ。あの方はリンチ司令官の元教官だそうですから」
「…警備艦隊司令官の名前で命令が出されていれば、勝っても負けても誰も傷つかない、か」
「そうですね」
6月11日06:00 エル・ファシル星系、エル・ファシル、自由惑星同盟軍エル・ファシル基地、
警備艦隊地上作戦室 ヤマト・ウィンチェスター
ヤン・ウェンリー…前は見かけただけだったけど…こうやって目の前にしてみると普通すぎて何の感慨も湧かないなあ。前に見かけた時も思ったけど、頼り無さ感満載だ。どうにかしてやろうと思うか、駄目だこいつは、と思われるかのどちらかだな。リンチ司令官は後者だったのかな。
自分があの時何とかしてれば…って思うのは驕りだ、って、確かキャゼルヌさんが言ってたよな。ヤンがまともにリンチを補佐出来ていたらどうだっただろう。遭遇戦に勝って、エル・ファシルの奇跡は起こらないんだろうな…そしたらヤンの評価はまともなものになっただろうし、いずれ『魔術師ヤン』と呼ばれる事になっても軍首脳に素直に受け入れられたんじゃないか?昇進は遅くなるだろうけど、本人はあまり気にしないだろうし…。だめだ、切り替えなきゃ。
「ウィンチェスター曹長、その、君は今回の戦いをどう思う?」
「前哨宙域の戦闘の事ですか?でしたらあまり意味は無いんじゃないですか」
「どうしてそう思うんだい?第一、今戦っている味方に失礼じゃないか」
「失礼しました。勝ち負けという事であれば、是非勝ってほしいです」
「そりゃあそうだろう。でも君は民間人を避難させる、または避難計画の必要性を感じた。…例えば負けたとする。エル・ファシルは当然失陥するだろう。避難させなくても、帝国軍だって民間人にひどい事はしないんじゃないかな。民心を得る必要があるからね」
「確かに民心を得る必要がありますね。当たり前に考えれば略奪暴行諸々禁止でしょうが、それを当たり前に考えるのは、我々が自由惑星同盟軍…民主主義の軍隊だからですよ」
「どういう事かな」
本当に分からないのかな。それとも試されてるのかな。
「ヤン中尉、我々は帝国から見たらどういういう存在ですか」
「自由惑星同盟を僭称する反乱軍だね」
「そうですね。彼等にとって我々は対等の存在ではないのですよ。軍人民間人は関係ない、帝国に対する反乱者なのですから。いわば政治犯罪者だ。犯罪者はどうなります?」
「収監される…しかし、二百万人以上
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