揺籃編
第十三話 エル・ファシルの奇跡(中)
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空けろ、本隊を九時方向にスライドさせるんだ。第3分艦隊には敵にわざと突破させるから、頃合いを見て急進して敵A集団の左側面を突け、と伝えろ。敵B集団がこちらを抜けたら本隊も急進、第3分艦隊の後方より迂回して敵A集団の右側面を突く!急げ」
帝国暦477年6月9日13:30 イゼルローン回廊、イゼルローン要塞、
クライスト
「閣下、軍務省よりFTLが入っております」
「判った。自室で受ける」
全く…。どうせ回廊出口での遭遇戦の事だろうが面倒な事だ…。
“忙しい所を済まぬな、クライスト大将”
忙しいと思うのなら止めてくれ。
「いえ、回廊出口以外は全く平穏無事であります。忙しいという事もありません」
”ほう、忙しくはなかったか、それなら丁度良い。たった今卿の口にした回廊出口の事だ“
「はい。何かご懸念がございますでしょうか」
”今出撃していたのはコルプト子爵であったな“
「そうです。第五二三任務艦隊です。優勢に戦いを進めていると側聞しておりますが」
“ブラウンシュヴァイク公の言葉からはそういう印象は受けなかったな”
「…後詰、という事でしょうか。」
”そうは言ってはいなかったな。ただ、一門の長として、陛下に不恰好な報告はしたくない、とは言ってはいたが“
「…現在、イゼルローン回廊内を訓練を兼ねてメルカッツ艦隊が哨戒中であります。ところで、この通信の事は統帥本部長、宇宙艦隊司令長官もご存知なのですか?」
“いや、卿への陣中見舞いを兼ねた私信のつもりだが…何か、私が間違っているのだろうか”
「…いえ、小官ごときへのお心遣い、真にありがとうございます。そういえば、メルカッツ艦隊の哨戒範囲は回廊内だけでなく回廊出口周辺宙域まで広がっていたのを失念しておりました。真に申し訳ございません」
“いや、よいのだ。忙しい所を済まなかったな”
全くもって不愉快だ!毎度の事ながら、自分のケツも拭けんとは!帝国の藩弊が聞いて呆れる!
何故俺がメルカッツに連絡せねばならんのだ!俺が頼んだ様に見えるではないか!
”お待たせ致しました。何か緊急事態でも起きましたか“
「いや、そうではない、そうではないのだメルカッツ提督。…異常はないか?」
“回廊内に異常は認められません。おかげで訓練も順調です”
「そうか!それは良かった。では、訓練日程は予定通りか?」
”いえ、順調すぎて二日ほど繰り上げて終了出来そうです。こちらからも連絡せねばと思っていたのですが、前倒しでの寄港は可能でしょうか“
「いや、それは可能だが」
“何かご懸念が……回廊出口、でしょうか”
「いや、少し気になるのでな。コルプト子爵は優勢に戦っておるそうだが
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