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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
揺籃編
第十三話 エル・ファシルの奇跡(中)
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令官はご存知なのですか?」
俺がそう言うと、パークス艦長は大きく息を吐いた。いらん事を聞いた、どうやらここから先はオフレコの様だ。

 「…知っていたら分艦隊司令部は苦労はせんよ。補給艦を戻した事も、この避難計画も、言わば独断だよ。みんなリンチ司令官の名前で行ってはいるがね」
「そうなのですか?」
「前哨宙域では新たな戦闘が始まっている。当然気も立っているし、余裕もない。そんなときに暇な我々が”避難を考えた方がいいのでは“何て言ってみろ。“俺たちが負けると思っているのか、暇人どもめ”なんて事になるだろう?」
「は、はあ」
「そして言い出したのは誰だ、という事になる。”旗艦乗組の下士官です“なんて事もとても言える事じゃない。だったら黙ってやった方がいいとは思わんかね?」
「ま、まあ」
「味方が勝っていれば、内輪の口頭注意で済む話だ。独断は誉められないが、非常時の事を考えていて真に宜しい、避難訓練、真に宜しい、となる。それが警備艦隊司令官の名前で命令された様に手回しが済んでいれば尚更だ」
「…負けていた場合は」
「…考えたくはないが、戦いに精一杯で民間人の事を顧みる暇はなかった、とは言えないだろう?だが警備艦隊司令官の名前で避難命令が出されていればどうだ?戦いには負けたが民間人は救った、最低限の任務は果たした、宜しい、となる。軍の名誉は守られる」
「なるほど、命令を出してさえいれば、勝てば誰も傷つかないし負けても言い訳が出来る、と言う訳ですね」
「ハハ、君は口が悪いな。では…2100時に駆逐艦オーク34が接舷するので、移動の準備をしたまえ」
「…第2分艦隊はエル・ファシルに戻らないのですか?」
「我々は前哨宙域に向けて移動する。…本艦乗組、短い間だったがご苦労だった。これからの君達の活躍に期待する。以上だ」



6月10日18:30 イゼルローン前哨宙域、エル・ファシル警備艦隊、旗艦グメイヤ
アーサー・リンチ

 第1分艦隊の突撃は半ば成功、半ば失敗した。
敵のA集団の後退に引きずられた第1分艦隊は、突撃隊形を完全に作る事が出来ないまま、敵A集団に突撃した。敵A集団が更に後退し、第1分艦隊を半包囲、この運動によって敵同士を引き離す事には成功したが、こちらも敵B集団の突破を避ける為に後退した結果、第1分艦隊との連携を完全に断たれてしまった。
「司令官、第1分艦隊が孤立しています。右翼第3分艦隊を前進させて敵B集団を迂回させ、反時計回りに敵A集団の左側面を突きましょう」
「…いい案だが却下だ。それを行うとこちらが敵B集団の突破を許してしまう。引き続き第1分艦隊には後退しろと…いや待て」
…どのみち突破されるのは時間の問題だ。その後はどうするか…全艦反転…いや駄目だ。…そうか!
「参謀長、第3分艦隊との間を徐々に
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