暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第22話:雪の温かさが彼を繋ぎ止める
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にある物とは全く違う上にボロボロだが、覗き見える横顔は未だに記憶に刻まれていた。何せ6年間すぐ近くで見続けてきたのだ。記憶に残らない訳がない。

 だが彼がここに居る筈はなかった。彼はあの日、自分の目の前で首を掻き切られそのまま何処かへ連れていかれて命を落とした筈なのだ。
 少なくとも助けに来てくれた国連軍の兵士はあの部屋に居た捕虜以外に子供の生存者は居ないと言っていた。
 つまり、彼も死んだ筈なのだ。

 では、今目の前の木に寄りかかって座り込んでいる少年は一体誰なのだろうか?

 その疑問の答えを求めてか、クリスはフラフラと少年に近付き、スカートが泥で汚れるのも構わずしゃがみ込むと少年の肩に手を置き話し掛けた。

「と、透……なのか?」

 震える声で、1年前に大人の理不尽で殺された筈の少年の名を呼ぶクリス。その声が届いたのか、それとも肩に手を置いたからか…………少年の瞼が震え、薄っすらと目が開かれる。

 少年は薄く開いた目をクリスに向けると、途端にどこか嬉しそうでそれでいて儚い笑みを浮かべた。

 それはクリスの記憶にある透の笑みと寸分違わぬもので────

「透────!!」

 思わぬ所で思わぬ人物との再会に、クリスは思わず歓喜し目に涙を浮かべる。

 だが笑みを浮かべた直後、少年――透はガクリと項垂れそのままズルリと横に崩れ落ちた。
 突然の事にクリスは傘も放り出して、雨に打たれるのも構わず倒れた透を抱き上げた。

「透ッ!? おい、透大丈夫か? しっかりしろッ!?」

 必死に呼び掛けるクリスだったが、対する透は彼女の言葉にうんともすんとも言わない。それどころか、触れて分かったが彼の体は恐ろしいほど冷たい。呼吸もどこか弱々しく、誰が見てもこのままでは死んでしまう事が明白だった。

――ど、どうすりゃいいんだッ!? このままじゃ、透がッ!?――

 死んだと思っていた少年と奇跡とも言える再会を果たせたと言うのに、このままでは死んでしまう。そしたらもう2度と会う事も、触れ合うことも出来なくなってしまう。
 その事を肌で感じ取りクリスは焦っていた。

 とにかくこのままここに居てはまずい。

 クリスはその考えに行きつき、透を担いで屋敷へと向かっていった。フィーネに見つかったら何を言われるか分かったものではないが、このまま放置するなんて絶対できなかったし雨風に晒すよりはずっとマシだ。

 自身も雨に打たれながら屋敷に戻ったクリス。
 幸いと言うべきか、フィーネはまだ戻っていないらしかった。

 誰も居ない屋敷の中を、クリスは透を半ば引き摺る様にして自身の部屋へと運んでいく。ここならフィーネにもそう簡単には見つからない。

 部屋に連れ込んだ透を、まずクリスは服を脱
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