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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
揺籃編
第十二話 エル・ファシルの奇跡(前)
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よろしく頼む」
「了解しました。これよりエル・ファシル合同庁舎に出向き、脱出計画の説明にかかります」
「よし、かかれ」

 体のいい厄介払い…いや、よそう。
イメージ云々はともかく作戦室長の言う事は尤もだ。艦隊司令部が出張らないと市民は納得しないだろう。問題なのは私の階級が伴ってない、という事だけだ。
それに民間船の徴用準備も乗船計画も急を要する。厳密には私は部外者ではないが、私が居たって邪魔なだけだろう。
それにしても、私はどうしてこうも事務処理が不得手なんだろう…歴史書を読むのは得意なのに、何故書類を読むのは苦手なのか。それがなければこうも厄介払いは…いや、よそう。



6月10日18:30 アスターテ星系、エル・ファシル警備艦隊第2分艦隊、旗艦アウストラ、
第2分艦隊司令部 ギル・ダウニー

 「主任参謀、補給艦はエル・ファシルに向かったかね?」
「はい。明後日の昼頃にはエル・ファシルに到着予定です」
「そうか。補給艦にはどれくらいの人間を乗せられるのだ?」
「十万トン級三十隻、二十万トン級十隻ですから、乗船者の為の最低限の飲料水と糧食を搭載しても、無理をすれば百万人は乗船させられます」
「そうか。そういえば、艦隊陸戦隊の強襲揚陸艦もあったな」
「はい。陸戦隊の装備を載せずに補給艦と同様の措置をとりますと、二百隻で五万人は乗船させられます」
「そうか…宜しい。ところで、今回もウィンチェスター君の発案かね?」
「そうです。彼は…司令の仰るようにアッシュビー元帥の再来かもしれません」
「…賛同者が増えて嬉しいな、それは。しかし、何故そう思うようになったのかね?」
「彼がこの案を持ち込む前の事です、食堂で私は彼と話す機会がありました。彼の同期や部下もいたのですが、話の内容は前哨宙域で戦っている味方の事でした。自分が警備艦隊司令官ならどうするか、と」
「ほう」
「彼は戦わないと言いました。戦わずとも、敵の面子を立ててやれば、敵は退くと」
「面白い考え方だな」
「その答えに至るまでの彼の考えがまた興味深いものでした。まるで見てきたかのような、既に確定事項のような…充分に有り得る、そのような推論でした」
「見てきたかのような、既に確定事項のような、か」
「士官学校への編入を推薦したことも話しました」
「…推薦したのか、彼を」
「はい。最初は驚いていましたが、後は平然としていましたよ」
「そうか…推薦したか。では死なせてはならんな。主任参謀、旗艦艦長を呼んでくれないか」
「了解しました」



6月10日17:40 イゼルローン前哨宙域、エル・ファシル警備艦隊、旗艦グメイヤ
アーサー・リンチ

 「司令官、敵B集団、我が方の右翼前方、二時方向に移動しつつあります。こちらの右翼側面または
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