揺籃編
第十二話 エル・ファシルの奇跡(前)
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うするんだ?」
自由惑星同盟って不思議なんだよな。有人惑星のある星系に警備艦隊があるのは分かるんだけど、中核となる戦力がいないんだよな。せめて一個艦隊でもエル・ファシルに常駐していれば、もっと楽だと思うんだけどな。それかジャムジード辺りに三個艦隊くらい常駐させるとかすれば、最前線は精神的にも物理的にもだいぶ楽だろうに、と思う。
いちいちフェザーン経由で情報もらって、帝国が攻めてきます、じゃあハイネセンから何個艦隊出撃…なんて、タイムロスが有りすぎるだろ…本当に自分達の領土を守る気があるのか??民主共和制の軍隊なのに民間人を守る、という色が希薄なように見える。
「いや、うちの本隊が負けたらどうするのかな、と思ってさ」
「え?負けるって事はないだろ。負けたってハイネセンから増援が来れば巻き返せるさ」
「同盟軍だけならそれでいいけど、エル・ファシルはどうなる?」
「どうなる、ってそりゃあ…民間人を脱出させる計画くらいはあるだろ」
「そりゃああるだろうさ。問題はそれを民間人に周知徹底させてるかどうかだよ。俺達訓練されてる人間だって緊急出港でめちゃくちゃ混みあうんだぞ。それを民間人にもやってもらう…想像できるか?」
「…単純にパニックだな。でも俺達がやらなくても」
「戦闘中の本隊は自分達で精一杯さ」
「じゃあエル・ファシルの地上作戦室は」
「前哨宙域と何個星系またいでると思う、危機感がないんだよ。負けた時を想定していれば呑気に補給艦出そうか、なんて言わないよ。それにあそこは艦隊が出撃してしまえば、補給管制がメインの仕事になる。何も考えてないと思うぜ」
「なんてこった」
百五十年も戦争してたら麻痺しちゃうのかな。戦闘始まったから避難の準備を、なんて毎回やってたらエル・ファシルの経済活動や市民生活はめちゃくちゃだろう、やってないだろうな多分。エル・ファシルが落ちた、なんて事がないから危機感が無いんだろうな。平和ボケではなくて戦争ボケか。
「でも、どうやって司令部に持ち込むんだ。前はカヴァッリ大尉が暴走してくれたけど」
「うーん、艦長にいうしかないな。その前に副長か。ドッジ准将に直接言ったら今度は怒られそうだ」
6月10日16:00 イゼルローン前哨宙域、エル・ファシル警備艦隊、旗艦グメイヤ
アーサー・リンチ
これ以上下がるとティアマト星系外縁部に入ってしまう。後退を続けても等距離で追って来るだけで何もしてこない。丸二日半も稼いだし、これ以上下がるのは危険だろう。
「オペレータ、敵A集団とB集団の間はどれくらいだ?時間的距離で頼む」
「はっ…およそ三十分です!付け加えますと、我が方と敵A集団の距離は三十光秒、至近です!」
「了解した…司令官、お聞きの通りです」
「気の利くオペレータだな。よし、全艦に作
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