第八十話 陳宮、決意するのことその二
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「私が御会いしたいと伝えて」
「ですが董卓様はです」
「誰にも合われないとのことです」
「話にならないわね」
董白の顔も声もうんざりとしたものになった。
「それじゃあね」
「とにかくです」
「宮殿の造営を」
「できないわよ、今は」
とてもだというのだ。
「戦で人を駆り出しているっていうのに」
「残った民達で」
「できるだろうと」
「宦官みたいなこと言うわね」
董白はそのことを本能的に察していた。
「姉様の言われることじゃないわね」
「ですから」
「それでも。相国であられる」
「そうね。そうなってるわね」
董白の言葉に棘が宿った。
「いいものよね。姉様のお名前を出せばいいんだから。それに」
「それに?」
「それにといいますと」
「帝はどうされているのかしら」
今度はだ。皇帝の話をするのだった。
「洛陽に入ってから一度もお顔を見てないわよ」
「帝はです」
「御身体が優れず」
「ですから」
「そうね。帝も相国もお姿を見せない」
董白はシニカルな口調で言っていく。
「有り得ないことね」
「はあ」
「それは」
「いいわ。仕方ないわ」
やはりシニカルな口調だった。
「それでだけれど」
「はい、それでは」
「宮殿の造営をです」
「御願いします」
「詠と話をしてね」
それでだというのだ。
「そうさせてもらうわ。ただ」
「ただ?」
「ただといいますと」
「遅れそうね」
口実であった。明らかにだ。
「人手がないからね」
「だからですか」
「それでなのですか」
「兵は殆んど関に出払ったわ」
彼等はだ。そうしたというのだ。
「それに若い働き手はね」
「民のですね」
「その者達については」
「同じよ。他の造営に出してるわ」
実際にその通りだが程度は話してはいない。
「だから。遅れるわ」
「何時頃になるでしょうか」
「それでは」
「さてね」
やはりはっきりと答えない董白だった。
「それはわからないわね」
「左様ですか」
「残念ですね」
「まあ。造営はするわ」
今回は言葉だけである。
「そういうことでね」
「畏まりました。それでは」
「私達はこれで」
「貴方達もね」
董白はその彼等にも話した。
「帝にもお姉様にも御会いできないのね」
「残念ですが」
「それはできません」
彼等にしてもだ。そうなのだった。
それでだ。暗い顔でこう話すのだった。
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