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戦国異伝供書
第七十八話 紺から紫へその十一
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「近いかと」
「そうであろうな」
「では」
「今川家を退けてな」
 そしてとだ、信長は林に答えた。
「そのうえでな」
「伊勢や志摩、そして美濃ですか」
「そうしていく」
「左様ですか、では」
「そのことは案ずるでない」
 まるで何でもない様にだ、信長は述べた。
「終わらせる」
「その時が来れば」
「そうする」
「また何でもない様に言われますが」
「そうではない、今川家は兵が多く侮れぬ」
 それはとだ、信長は林に淀みない声で答えた。
「だが攻める時期は違っても来る場所は一つしかない」
「東海道を上がってですか」
「それしかないからな」
 だからだというのだ。
「それなら対し方があるからじゃ」
「既に殿は」
「考えておる、しかしその時は」
 信長はここで笑って林だけでなく他の家臣達も見て話した。
「お主達は驚くであろうな」
「殿、それはまた冗談が過ぎますぞ」
 笑う信長を金森が諌めた。
「驚くなどとは」
「わしが何をしても驚かぬか」
「はい、殿のなされることにこれまでどれだけ驚いたか」
「だからか」
「もう何があろうとも」
 信長が何をしようとも、というのだ。
「それがし達はです」
「驚かぬか」
「殿の傾きについては」
「そうか、ではその言葉忘れるでないぞ」
「またその様なことを」
「しかしわしは必ずな」
 信長はあらためて言った。
「今川家を退けてな」
「そうしてですか」
「そのうえでな」
「あらためてですな」
「天下を目指す、尾張を確かなものにするのは当然としてな」
 それで終わらずというのだ。
「そうしていく、そしてやがて四国にもな」
「進むと」
「そうする、出来れば十年のうちにな」
 それまでの間にというのだ。
「上洛し近畿を掌握し」
「そのうえで」
「四国じゃ、そしてあの者が素直に降ればよいが」
「そうでないなら」
「戦ってな」
 そうしてというのだ。
「そのうでな」
「降して」
「家臣にしたい、そしてお主達と共に」
「天下布武とその後の治にですか」
「働いてもらいたい」
 遠く尾張にあってだった、信長は弥三郎のことを言っていた。そして彼の初陣の時を彼の弟達と同じく楽しみにしていた。
 それでだ、彼が元服をしたがそれでも初陣は見送られたと聞いてこう言った。
「土佐の者達は後になってしまったと思うわ」
「長曾我部殿の初陣を遅らせたことを」
「そうじゃ、姫に見えてもな」
 丹羽に対して話した。
「それでもな」
「その実は鬼であられるので」
「鬼の働きを見るのが遅れたとな」
「そう思われて、ですか」
「悔やむわ」
 そうなるというのだ。
「必ずな」
「ではこの度のことは」
「迂闊であった、だが初陣の時に」

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