MR編
百五十九話 苦闘
[5/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
制に入る。
「(突、きっ……!!)」
ユウキが……正確にはユウキの身体が次に取ったのは右腕を率いぼるような突きの構え、片手直剣であの体制から放たれる技と言えば、十中八九《ヴォーパル・ストライク》だ。しめた、とアスナは踏んだ。体制を大きく崩しているとはいえ、タメが大きいうえに当たり判定の小さい単発の突き技であるあの技なら、身体を投げ出すつもりで無理矢理動けば何とか回避の目はある。これを何とかしのいで一度距離を取るしかない。……と、そこまで想ってから、はたと気付く。何度となく自らの隣で愛する少年がその技を放つ姿を見てきた。だからあの構えを見て反射的に技を判断したが、ユウキには……「ユウキにだけは」ある。ヴォーパル・ストライクに酷似した体制から放つことの出来る技が、もう一つ……!
「ぁ……待って……ダメ……」
爆発的な光がユウキの剣から左右へと翼のように広がる。これまでに何度か目にした其れは天使の羽のようだと思えたが、今改めて目の前にしたそれは、状況のせいか、あるいはユウキの身体にまとわりつく黒い靄の所為なのか悪魔のそれにすら見える。見開かれたユウキの深紅の瞳が恐怖の色に染まり、その目尻に今度こそ透明な滴がにじむ。
「……ッ……!」
放たれかけた刃が一瞬だけ小刻みに震えながら固まったのはきっと気の所為ではない。ユウキの意志が、暴発しようとする自らの必殺の剣技を必死に抑え込もうとしているのだと言う事は、彼女の必死の表情と何かを言おうと小さく開いた口元だけで十分に分かった……けれどもその時間は本当にほんの一瞬で、アスナがその射程から逃れるのにはあまりにも時間が足りなかった。
「やめてぇぇぇぇっっ!!!」
アスナが初めて聞く悲痛な悲鳴を上げて突き出された神速の一撃が、その身体を刺し貫く──その瞬間
「とっっころがぁ、どっこいっ!!」
「!!」
カァァンッ!!と甲高い音を立てて、アスナの数センチ脇を駆け抜けた剛風がその一撃を跳ね返す。反動で吹き飛ばれるユウキと尻餅をついたアスナの間に割り込むように大きな影があらわれた。
「そうは問屋がなんちゃらほい……ってな」
「リョウ!!」
「よぉ、遅くなって悪かったなっと!!」
軽口もそこそこに、リョウはユウキに向けて一直線に突っ込んでいく。ソードスキルは発動中に何らかの要因(主に今のような外部からの干渉だが)によってスキルの軌道を決定的に外れてしまうと、スキルが大失敗を起こしてかなり大きな硬直が課される。この性質は、アバターを操られている今のユウキにしても同様だ。このチャンスを逃す手はない。
「俺の方で彼奴の動き止める!!その隙にアクアバインドかけろ!準備急げ!」
「え、で、でもリョウどうやって──「こうやってだ!!」
吹っ飛んだユウキのとリョウの間に在っ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ