第五十七話 卒業式その二十八
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「長池さんって人だったな」
「長池先輩みたいにっていうのね」
「あの人みたいないい先輩になってな」
そうしてとです、お父さんは私にさらに言ってきました。
「それからのことも考えるんだな」
「それからのことっていうと」
「そこは千里が気付いてからだよ」
「気付いてって」
「もう周りは皆気付いてるだろうな、お父さんもお母さんも」
お父さんの声は上機嫌な感じでした。
「詰所の人達もわかっているな」
「多分千里のお友達の娘達もね」
「つまり私の周りの人達全員?何をわかってるのかしら」
そこがとんとわからないです、それも全く。
「一体」
「そこをわかると千里の人生がかなり変わるわよ」
お母さんは私ににこりと笑って言ってきました。
「本当にね」
「変わるの?」
「そう、人生が本当の意味ではじまるのよ」
「本当の意味って」
「だから。そろうてよ」
十二下りの中の一節でした、これは私にもわかります。
けれどこれは夫婦そろうて、です、何で私が夫婦なのかがどうしてもわかりませんでした。ですが。
その私にです、お母さんはさらに言ってきました。
「まあどうしてもわからなかったらね」
「どうするの?」
「お母さんが背中押してあげるわね」
「私の背中をなの」
「そうしてあげるわね」
「あの、私の背中押しても」
そうしてもでした、お話を聞いても。
「別にね」
「何もないっていうのね」
「一体何があるのよ」
本当にそれがわかりませんでした。
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