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戦国異伝供書
第七十八話 紺から紫へその四

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「来たるべき日に備えさせる」
「ううむ、上手くいけばいいですが」
「殿の言われる様に」
「そうなればいいですが」
「我等の悩みが杞憂だと」
「その様に」
「案ずることはない、一切な」
 国親だけが落ち着いていた、そうしてだった。
 領地の政のことを行い戦もしそして他の国人達を取り込む様なことをしていった、そしてその弥三郎は。
 学問にも武芸にも励んでいた、だがあまりにも柔弱であり家臣の誰が見ても不安を感じずにはいられなかった。
 おどおどして碌に喋ることも出来ず風景ばかり見ている。そんな彼を見て長曾我部家の家臣達は嘆いてさえいた。
「この有様では」
「先が思いやられる」
「戦なぞ期待出来ぬ」
「政もじゃ」
「人をまとめられるか」
「この土佐は食うか食われるかというのに」
 国人達がそうして潰し合っている状況だがというのだ。
「果たしてどうなるか」
「弥三郎様が主になられれば終わりじゃ」
「当家は滅ぶ」
「他の家に攻められ滅ぼされるぞ」
「大殿の時と同じじゃ」
 弥三郎から見て祖父にあたる兼序の様にというのだ。
「岡豊の城を奪われるぞ」
「あの時は一条様のお力で何とかなったが」
「この度はわからぬぞ」
「今度はどうなるか」
「我等は滅ぼされるぞ」
「今度はそうなるぞ」 
 こうした話をしていた、だが。
 国親は弥三郎にこう言っていた。
「お主は筋はよい、だからな」
「このままですか」
「学問をしてな」
 そうしてというのだ。
「武芸もな」
「学んでいけばよいですか」
「うむ、しかしな」
「しかしと申しますと」
「わしはお主は戦の場に出れば」
 その時はというのだ。
「必ず大きな働きをしてくれる」
「そう信じておられますか」
「心からな、だから元服すればな」
 その時はというのだ。
「すぐに戦の場に出したいが」
「それは、ですか」
「出来ぬ」
 我が子に対して残念そうに述べた。
「とてもな」
「だからですか」
「待つのじゃ」
 初陣、その時をというのだ。
「よいな」
「待つこともですか」
「大事じゃ、お主はそれまでな」
「学問に武芸に励み」
「そして己を養うのじゃ」
 そうすべきだというのだ。
「焦ってはならぬ、お主はどうも尾張の織田殿に似ておるな」
「織田弾正殿ですか」
「あの御仁のことは聞いておるな」
「うつけ殿と呼ばれていましたが」
「それがじゃ」
 信長、彼はというのだ。
「家を継がれてから瞬く間に頭角を現わされておるという」
「瞬く間に」
「そうなっておるからな」 
 だからだというのだ。
「お主もな」
「織田殿の様に」
「時が来ればな」
「その時はですか」
「頭角を現わしてな」 
 そしてというのだ。
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