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戦国異伝供書
第七十八話 紺から紫へその三

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「大きくなっていくか」
「そうしていきますか」
「この度は」
「そうしてそのうえで」
「少しずつ大きくなりますか」
「とかく生き残る為にな」 
 長曾我部家、この家がというのだ。
「今はな」
「他の家を取り込んでいき」
「少しずつでも大きくなる」
「そうしていくことですか」
「戦よりもな」 
 それに勝ち敵の領地を奪いそれによって大きくなるよりもというのだ。
「それよりもな」
「政ですか」
「周りの家を取り込んでいきますか」
「少しずつでも」
「そうしようぞ、そしてわしの後はな」
 ここで国親は笑って述べた。
「弥三郎がおるしのう」
「あの、殿」
「弥三郎様は」
「あの方については」
「どうも」
 国親が彼の嫡子である弥三郎の話をしたところでだった、家臣達は皆困った顔になりそのうえで述べた。
「あまりにも柔弱で」
「いつもぼうっとして景色ばかり見られて」
「おどおどしている様で」
「何も語らず」
「お身体はひょろ長く変に色白で」
「まるで姫様です」
 彼のことをこう言うのだった。
「姫若子と呼ぶ者もいます」
「あの方ではこれからの長曾我部家は」
「果たしてどうなるか」
「いや、弥三郎ならな」
 国親は不安を露わにする家臣達に笑って話した。
「必ずわしより遥かに大きなことを為すぞ」
「そうなのですか」
「あの方は」
「殿よりもですか」
「大きなことをされる」
「そう言われますか」
「必ずな」 
 まさにとだ、国親は淀みなく述べた。
「あ奴はな」
「そうなのですか」
「あの方が、ですか」
「後に殿を継がれ」
「大きなことをされますか」
「あの様な者の方がな」
 今の弥三郎の様な者がというのだ。
「やがてはじゃ」
「大きくなられる」
「左様ですか」
「では殿は心配されていないですか」
「弥三郎様のことは」
「全くな、しかしな」
 それでもとだ、国親は言うのだった。
「お主達は不安で仕方ないか」
「あれでは戦は出来ませぬ」
「あまりにも弱々しいです」
「あの様な方が長曾我部家の主となれるか」
「そして戦えるか」
「それはです」
「とても思えませぬ」
「それはわかる、今は弥三郎に学問をさせ」
 そしてというのだ。
「そのうえで武芸もな」
「学ばせますか」
「そうされますか」
「今は」
「うむ、そしてな」
 そのうえでというのだ。
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