揺籃編
第十一話 過去、現在、そして明日へ
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るべき親兄弟親戚が皆、戦死してしまったからです。でも悲しんでばかりはいられない。宇宙艦隊を再編しなくてはならない。しかし再建には時間がかかります、そこでイゼルローン回廊に要塞を建造して、回廊を封鎖することを考えた」
「それからは今の情勢か…ウィンチェスター、君は勉強家だな。しかし我々が当面気にすべきは前哨宙域の戦いであって、歴史ではない。今までの話がどう繋がるのだ?」
セッカチだなあ、せっかく暇なんだから、暇潰しに付き合ってもらわないと困りますねえ。それに現状を理解するためには過去の経緯がすごく大切なのですよ。概説を軽んじてはダメですよ、ドッジ君。
「…イゼルローン要塞が完成した結果、イゼルローン回廊内や帝国から見たイゼルローン回廊出口、いわゆるこの辺りの事ですが、戦場が同盟側に固定されたために、帝国軍は無理に艦隊の数を揃えなくてもよくなったのです。ですが帝国軍は二つの問題を抱える事になりました。平民の台頭と、門閥貴族による軍の私物化…私兵、軍閥化です」
「なんだと」
「現実問題として、指揮官は揃えなければならない。失った貴族指揮官の穴は平民が埋めることになりました。ということは軍の将来は平民が担う事になりますが、帝国政府、軍としてはそれは避けたい。平民は潜在的な反乱階級だからです。彼等に力を持たせる事は避けなければならないとなると軍の中枢は貴族が担う事になりますが、彼等はその能力を失っている。現状では貴族は軍をコネ作りや自家の勢力伸張の場所として利用しています」
「そんな事になっているのか。どうやって調べたんだ」
「帝国を批判する出版物はたくさんありますし、フェザーンから入ってくる情報からでも推察は可能ですよ。現に門閥貴族の抱える私兵は、帝国軍所属には違いないでしょうが、帝国軍宇宙艦隊…正規艦隊の命令系統からは外れているとしか思えません。一応宇宙艦隊司令部には出撃許可を取るとは思いますけどね。暇なので過去の戦闘記録や、捕虜の尋問記録を調べましたが、帝国軍によるイゼルローン回廊内や近隣星系の哨戒は宇宙艦隊の命令系統に属するイゼルローン要塞駐留艦隊や、それに付随する哨戒部隊が行っていますが、遭遇戦の殆どはやはり正規艦隊に所属していない分艦隊が行っていました。貴族達が武勲欲しさにやっているのですよ」
「…正規艦隊でもない貴族の遊びに付き合わされているというのか、我々は」
「…遊びかどうかは分かりませんが、そうなりますね。ここで話がやっと目の前の問題に下りてきます。武勲を欲しがる人たちというのはどういう人たちですかね?」
「見返したい、抜け出したい、期待に応えなくてはならない…そんなところか?」
「そうですね。貴族でも前線に来るのはそういう人達です。そういう人達が援軍なんて他人の手を借りると思いますか?」
「借りない、だろうな」
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