急報、そして救難
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体温症も併発してましたからいきなり風呂は無理だと判断しました。意識もありませんでしたしね」
艦娘の傷を癒す定番といえば風呂だが、当然ながら意識の無い者を風呂に入れるのは危険極まりない。それに低体温症を発症している場合、急激に身体を温めると身体がショック症状を起こして最悪の場合心停止に陥る。そういう場合には少しずつ温めて、徐々に体温を上げていくのだ。その辺の判断は医学的知識も持ち合わせた明石の事だから疑ってはいない。
「ここまで酷いとバケツも使えんしなぁ」
艦娘の修復、といえば高速修復剤ことバケツが有名だ。轟沈寸前の大破状態でも一瞬で治せる魔法のような薬に思えるが、万能ではない。バケツは艦娘の細胞の活性を高めてその傷を癒す、正確には『高速修復促進剤』と呼ぶべき代物。その活性化によって欠損部位の再生治療すら可能にするが、急速に修復すると細胞組織その物が脆くなったり、神経系に僅かな麻痺が残ったりと後遺症が残る可能性が高くなる。骨折や筋肉の断裂位ならば何の問題もなく治るんだが、やはり喪った物を再び生やすというのは大変な事ってワケだ。なので、ウチでは重傷者は時間がかかってもバケツは使わず、じっくりと治す事にしている。
「錬度は?」
「修復作業開始前に調べておきました……錬度87。ここまで損傷を受けるとはちょっと考えにくいレベルですね」
「だなぁ。まさかとは思うが、『お仕事』増えちゃうかねぇ?」
「……かもしれませんねぇ」
「はぁ……嫌だ嫌だ」
迷惑そうにぼやきながら、工廠を後にする提督。その後ろ姿を明石が見送っていた……少し顔を青ざめさせながら。
執務室に戻った提督は、直ぐ様大淀にデータベースへの照会を指示した。艦娘の救難・及び捜索願いが提出されていないかを確認する為である。しかし結果は空振り。現在軽巡『矢矧』の捜索願いは提出されていない、との事だった。
「やっぱりなぁ」
「……何がやっぱりなんです?提督」
「状況があからさまに不自然なんだよ」
そう言って提督は眉間の皺を深くした。
「まず、矢矧が発見された状況だ。大淀、どういう状況だったか覚えてるか?」
「絵ぇ。両足を欠損しており、且つ背部の艤装を喪っていたと」
「そこだよ、不自然なのは。大淀、艦娘にとって背部と脚部の艤装ってのはどんな意味を持つ?」
「簡単じゃないですか。背部の艤装は推進や砲雷撃の為のエネルギーを生み出す機関で、足の艤装は浮力を得る為の……あ」
ここで漸く大淀も気付いたらしい。
「そう、どちらも『作戦行動中の艦娘』なら、必要不可欠な代物だ」
水中を進むことを前提に建造される潜水艦はともかく、ほぼ全ての艦娘にとって脚部の艤装というのは海上で戦う為には必
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