第94話 并州入り
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「宝慧の言う通りなのですよ〜。随分と重い話なのです。正宗様のお身内が賊の逃亡を手助けするなんて前代未聞なのです。でも、大した賊ではないのですから、賊を殺して幕を引いても良いのでは?」
風は口とは裏腹にアメを舐めながら、落ちついた口調で言いました。
「それでは駄目だな。今後、このような独断専行をされては、この私だけでなく、私の家臣の身にも危険が及ぶような事態があるかもしれない。だから、今回のことを有耶無耶にしてはいけない」
私は真剣な表情で風を真っ直ぐに見据えて言いました。
「分かったのですよ」
風はしばらく私を凝視していましたが、深いため息を吐きながら言いました。
「正宗様の仰る通り、それが事実であれば揚羽様と真悠殿は許してはいけないのですよ〜。信賞必罰、これを徹底しなければ、組織などたちまち崩壊するのです。それで、正宗様は賊から真相を暴いたら、お二人を如何に処断されるおつもりなのですか」
風は私の顔を窺うような目付きで凝視しました。
「今回のことは、賊の逃亡幇助だ。本来なら斬首だが、揚羽はこれまで私の為に必死に働いてくれた。それを鑑みて、棒叩き百回の刑に処す。真悠は揚羽の指示を受けて動いたとはいえ、その罪は重いので、棒叩き五十回の刑を処す」
私は自分が考え抜いた末の答えを言いました。
「棒叩き百回・・・・・・、無難だと思うのですよ〜。ですが、暫く2人を謹慎に処すことをお加えになった方がいいと思うのですよ。少なくとも、烏桓族を討伐するまで」
風は頷きながら言いました。
「分かった。お前の献策を採用しよう」
「正宗様のご決断は正しいと思いますよ」
風は私の顔を真剣な表情で見つめて言いました。
「元はと言えば、この私の甘さが招いたことだ・・・・・・。私がもっとしっかりしていれば、あの2人の行動は無かった」
私は自責の念を感じながら、力無く言いました。
「そうですね。しかし、それに気づき改められようとしているのなら良いのはありませんか〜。正宗様は私達の主君なのですよ。仮に主君に落ち度があろうと、それに不満を抱き暴走することは家臣のすることではないのです〜。だから、正宗様が罪悪感に感じられる必要はないのです。それでも、納得できなければ、良き主君に成ることを心掛けられることなのです〜。でも、無理は禁物なのですよ〜。あなたに付いてきた家臣はあなただから付いてきているのですから」
風は真剣な表情で私に言い終わると、軽く微笑みました。
その後、私と風は夜更けまで、北郷討伐の方針について話し合いました。
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