第94話 并州入り
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なにも悩むものとは思いませんでした。
為政者だからこその悩みでしょう。
裁かねば周囲への示しがつきません。
北郷を処刑して、冀州に戻った後のことを考えると憂鬱になります。
「正宗様、まかり越しました〜」
私が苦悩していると風が陣幕の外から、声を掛けてきました。
「風か? 入ってくれ」
「失礼いたします〜」
私が中に入るように促すと風はそそくさと陣幕の中に入ってきました。
「立ち話もなんだ。そこに座るといい」
私は風に椅子を勧めました。
「ありがとうなのです〜」
彼女は椅子に座ると私を向き直りました。
「それで正宗様、今回の討伐はいかなるご存念なのですか〜」
風はアメを舐めながら、言ってきました。
「あの時の話で納得できなかったのか?」
「当然なのです。たかだか義勇軍崩れの賊如きに、正宗様が直々に手を下す道理がないのです〜。ただ、仮にも中央の官吏である督郵を襲撃した賊を見逃した事態を考慮すれば、正宗様が自ら動き、その手で賊を誅殺されることは中央へ示しになるのです〜」
彼女は私を興味深そうな表情で見つめました。
「北郷を取り逃がした張本人である真悠殿はあの場で黙るしかありませんでしたね。でも、一つ腑に落ちないことがあるのですよ〜。正宗様、何か分かりますか〜」
彼女はそういうと私をアメを舐めるのを止めました。
「お前を北郷討伐に同行させたことだろう」
「はいなのです〜」
「兄ちゃん、流石だぜ!」
彼女の頭の上の宝慧が言いました。
「もともと、話すつもりでここに呼んだ。お前は私に士官して日が浅いから、私の家臣とも一定の距離間がある。それに、知恵が回る。最初、稟も人選に入っていたが、彼女だと表情にでる可能性があるので、いつも沈着冷静なお前を選んだ」
「ふむふむ、機密性が高く、正宗様の陣営内部の問題なのですね」
風は腕組みをしながら聞いていました。
私はそんな彼女を見て、ひと呼吸置いた後、話を再会しました。
「実は真悠が故意に北郷を逃がしたと思っている。だが、真悠は実行犯で、彼女に指示を出した人物が別にいるだろう。真悠が全てを考え行動したとは思えない。彼女は合理的な女だ。徳にもならないことを実行するわけがない。誰かの指示に従ったというのが自然だ。そうなると、揚羽が一番怪しい。彼女は劉備と北郷に対する私の遣り方に不満を抱いていた。彼女の指示なら、真悠は黙って従うだろう。だが、証拠がない。だから、私は北郷を捕らえ、その真偽を確かめるつもりでいる。その後で、北郷の息の根を止める」
風は私の告白に絶句しました。
「おいおい、兄ちゃん。話が直球すぎるぜ!」
宝慧が私を非難するように言いました。
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