力を得た代償は・・・
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「さぁ、大人しく眠るといい」
ついに最後の力を解放したティオス。その魔力の質は今までのそれを遥かに上回っていた。
「へぇ・・・それがお前の本気か、レオン」
「くく」
その姿を見てもあくまで余裕の表情のシリル。そんな彼を見てティオスもまた、不敵に笑っていた。
「その余裕がいつまで続くかな?」
その直後、真っ黒な翼を得たティオスがその場から消える。シリルはその瞬間左肘で顔をガードする。
ガンッ
その左肘に強烈な拳が突き刺さる。その凄まじい威力により、少年は地面を削るように吹き飛ばされる。
「くっ」
それでもすぐにバランスを立て直し敵の方に顔を向けるシリル。しかし、そこに彼の姿がない。
「こっちだ」
「!!」
後ろからその声が聞こえ体を反転させる。だが、それでも反応が間に合うわけもなくティオスの怒涛の攻撃がシリルの体へと突き刺さる。
「このっ・・・」
一瞬攻撃が止んだタイミングで反撃に出ようと拳を握るシリル。
「遅い」
それなのに、追い討ちをかけるようにティオスの蹴りが頭部へと突き刺さった。
「がっ!!」
飛び散る鮮血。驚愕のパワーアップを遂げたはずの少年はそのまま地面へと倒れ込んだ。
「シリル!!」
岩の影から二人の様子を見守っていた少女は思わず叫んだ。こめかみからどんどん血が流れていく少年は、ピクリとも動かない。
「こりゃあ無理だぜ、ジェラール」
冷静な声のトーンでカミューニが言う。しかし、その声とは違い顔色は明らかに悪いものになっている。
「あのシリルでも勝てないとなると、俺たちではどうしようもないぞ」
一時は希望が見えたかに思えたシリルvsティオス。それなのに、ティオスがすべての力を解放した途端、状況は一転してしまった。
「メェーン・・・とてもじゃないが、助太刀することもできないぞ」
「あぁ、間に入ろうものなら、足手まといになりかねない」
シリルの援護にいこうにも、明らかに自分たちがついていけるようなレベルの状態ではない。3人が躊躇っていると・・・
「シリル!!」
一番前でこの戦いを見守っていた少女が、あろうことが2人の方に走り出してしまったのだ。
「おい!!ウェンディ!!」
「止まれ!!行くんじゃない!!」
懸命に叫ぶカミューニとジェラール。しかし、その声は確実に届いているはずなのに、彼女は足を止めることはない。
(待っててシリル!!今助けるから!!)
ただ大切な人を守るために、何も考えることもなく突っ走るウェンディ。その判断が大きな過ちに繋がることを、この時の彼女は知るよしもなかった。
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