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彼願白書
at sweet day
デアレスト・ドロップ
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「茶会?」

「はい。茶会です」

霧島から渡されたシンプルながら品のある封筒に自分の名前と差出人の金剛の名前が書かれている。
それだけでも妙なのに、やたらと凝った紅い封蝋を外し、中の便箋に書かれた内容に更に顔をしかめる。

「御姉様が、是非にと」

「金剛の部屋で?」

「はい。御姉様の部屋で」

寮舎にある金剛の部屋は東南の角部屋で少し広めの部屋になっている。
一応、そこら辺の1Kのアパートの一室よりは広い間取りだが、茶会をやるような広さはないハズだ。

「この招待状は、他に何枚配ってるんだ?」

「その一通だけです」

キャパシティの問題は解決したが、別の問題が増えた。
問題の総数で言うなら、悪化している。

「つまり、君と金剛と私でお茶をしようと?理由がわからないな」

「私はその茶会に招かれていません。給仕もいません。御姉様と二人きりです」

問題はまたひとつ減り、またひとつ増えた。

「私に用があるだけなら、こんな形式張った茶会の形でなくても、ここに顔を出せばよいだろうに。私と何を交わすつもりかね?」

「そこまでは聞いておりません。私は御姉様から預かったこれを届けに来ただけですので」

霧島もやや不機嫌な態度で答える。
なるほど、霧島にとってもこれは不本意らしい。

「疑念は尽きないが……わかった。行くと伝えてほしい」

「わかりました。では、失礼しました」

霧島はそれだけ言って軽く頭を下げ、そして執務室を出ていく。
丁寧とも、粗雑とも遠い、適切という表現がピタリと当てはまる力加減で閉められた扉を見ながら考える。

霧島は今回の金剛が招いてきた茶会の詳細を知らない。

霧島が知らないふりをしている?
それについては霧島の性格を考えれば否であろう。
そのような演技派であったなら、もっと上手な立ち回りが出来る。
それが出来ないから、霧島はここにいると言ってもいい。

つまり現在の関係者の中では金剛一人だけの企てとなる。
では、金剛以外の他にまだいない登場人物がいる可能性はどうか?
こちらは大いに有り得る、は誇張表現になる程度の可能性だろう。
金剛の交遊関係は見える限りでは霧島、そして作戦中にほぼ同じ編成に入る五航戦姉妹、あとは鈴谷と熊野くらいだ。
水雷組とはほぼ縁がないと見ていい。
そして、あったとしても何かを企てるような間柄であるかは、疑問符が付く。

そして、金剛の性格を考える。
何かを企てる時に、人を巻き込むタチかどうか。
こちらについても否だろう。
半ば世捨て人に近い、厭世的で自己否定の強い性格だ。
誰かを巻き込むことはヨシとしないだろう。

ここまで考えて、やはり金剛が一人で考えて行動したことと判断する。


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