揺籃編
第十話 奇跡前夜
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宇宙暦788年6月6日23:00 アルレスハイム星系、エル・ファシル警備艦隊第2分艦隊、
旗艦アウストラ セバスチャン・ドッジ
こんな事で休息中の司令を起こさねばならんとは…。軽視してはいけないのだが、
本当に今必要なのかと思いたくもなる。
「司令、お休みの所を申し訳ありません。エル・ファシル基地の警備艦隊地上司令部作戦室より要請が届いております」
「…構わん。何だ?」
「アスターテに出す補給艦の護衛要請です。哨戒を通常配置に戻し、第2分艦隊主力はアスターテに戻られたし、とあります」
「補給艦の準備は分かるが、何故護衛が必要なんだ?」
「さあ…イゼルローン回廊入口での戦闘ですから、大事をとって、ということではないでしょうか。本隊からの連絡によりますと、新たに発見した二千隻程の敵と思われる反応以外に、新たな敵の兆候はないとのことです」
「ということは、地上司令部はここに向かってくる敵はいないと判断しているのか」
「ではないでしょうか。要請ですから艦隊司令官の許可は得ている筈です」
「となると艦隊司令部も我々がアルレスハイムから退いても差し支えない、と考えている事になるが…主任参謀、どう思うかね?」
確かにダウニー司令の言う通りだ。
ダウニー司令は少将に昇進なされた。多分今回の出撃が最後の作戦行動になるだろう。私も司令と同日付で准将に昇進した。そして司令の退役後は私がこの分艦隊の指揮を執る事になっている。
私が昇進した後から司令は、分艦隊について何も言わなくなった。そして私の進言が全面採用されるようになった。私に艦隊指揮に慣れさせようとしているのだろうと思う。
普段はいい。通常の哨戒や日常のスケジュールをこなす分には前例に従っていれば何も問題はない。
問題は意思決定しなければならない時だ。それを考えると、参謀という立場がどれだけ気楽な事か。
そして指揮官に交代はない。
「艦隊司令部が是としているのであれば、これに従わねばなりません。通常の哨戒ですと二から四隻です、回廊前哨宙域で戦闘が行われている事を考えますと、少なすぎると言わざるを得ません。そして現在我々は六十四隻の兵力です。戦闘哨戒を行うにしても少なすぎる兵力です。もともと少なすぎる兵力ですからどのようにしても問題ないと考えます。ですので、四十隻をアルレスハイムに残置します。これを十のグループに分けて哨戒させます。各グループの指揮はそれぞれのグループの先任艦長に執らせます」
「我々はどちらになるのかね?」
「無論、アスターテに向かいます。司令部が存在する場所が主力ですので」
「…了解した。そう処置したまえ」
「ありがとうございます」
6月7日09:00 エル・ファシル、自由惑星同盟軍エル・ファシル基地 ヤン・ウェンリー
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