抉り取られた悲壮の意思
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しんでる。あんなに胸に期待を弾ませていたのに。走馬灯のような光景に笑顔がほとんどない。
「……ねえ、ラティ? 私ってポケモンバトルの才能ないんだって。負けてばっかりで、痛い思いさせて、本当にごめんね」
ベンチに座って微笑みかけるキュービ。だけど、無理矢理作ってるだけなのが嫌でもわかる。
よく見れば、キュービ自身の手やスカートから覗く足にも痣が出来ていた。泣いてはいないけど、目が赤い。
「でもねでもね、私はチャンピオンの娘だから。ポケモンバトルがそんなに強くなくても、愛嬌があって可愛いから。このフロンティアにやってくるお客さんに笑顔を向けて勝負の相手をすれば、それだけでお父様の役に立てるって。お母様にも心配かけちゃったけど、それなら大丈夫だよね」
褒められてるのに、全く嬉しそうじゃない。当たり前だ。
ポケモンバトルで活躍したくてここに来たのに、自分が偉い人の娘だからとか。可愛いからとか。そんなことで役に立てと言われても困ると思う。わたしなら怒る。
「……ああ、いたいた。勝手にあまり離れたところに行くなって言ったよね?」
冷たくて、尖った鋼を突き刺すような男の子の声がした。
サフィールとどこか似た顔つき、年齢はわたしや今見ているキュービと同じ13歳くらいに見える彼は。まるで躾の出来てないガーディを見るような目でキュービをにらみ付けている。
「ご、ごめんなさいダイバ君。少し、お母様と電話したくて」
「君のお母さんってバトルやらないでしょ。そんなことのために約束破らないで。バトルで勝った方の言うことを聞く。忘れてないよね?」
(そんなこと、って!)
あまりの言い方にカチンと来る。こいつそもそもキュービの話を聞こうとしていない。
「……勝手に離れたのは謝るわ。だけど、お母様と電話するくらいいいでしょ?」
「用があるならメールでも打てばいい。君は弱いんだから、僕から離れないで、知らない人からのバトルは受けるな」
「お願い、二人で話がしたいの。でないと、私──」
耐えられない。声に出してなくてもそう感じた。
「……なら、もう一回勝負する? 今度は、もっと力を込めて殴ろうか。メタグロス」
少年から発せられる殺気。ボールから出てくる巨大な鋼の四つ足。ラティアスとキュービが一瞬で青ざめる。
「待って!! わかった、わかったから……お願い、それはやめて」
無意識にか、キュービはラティアスを抱きしめていた。
「わかればいいよ。君は僕には勝てない。チャンピオンの娘、師匠も強いから少し期待してたけど、全然たいしたことなかった。君は僕にできないことをすればいい。ポケモンバトルの強さなんて求めず、チャンピオンの娘として、この施設のオーナーの息子である
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