後編
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車が走っていた時間はそう長くなかったから、まだ巌戸台から出ていないだろう。
「声を立てるな。」と脅されて、何か尖ったものでつつかれる。騒いだら刺す、ということらしい。
私はそのまま担ぎ上げられた。建物に入った気配がする。そして床に転がされた。つるつるした感触からして、下は塩ビシートのようだ。
男達は何か相談をしているようだが、声は良く聞こえない。
いい加減たってから上半身を起こされると、縛られた体はそのままに頭の部分だけナイフで切り抜き顔を出された。
室内は何かの目的の広い部屋。
すぐ横にはホテルのようなダブルベッドがある。しかし傍らの壁や天井からは拘束具のような鎖が複数垂れ下がり、磔台のようなものも見える。まるで拷問部屋の様な異様な雰囲気だ。いったいどういう部屋なんだろう。ここでいったい何をするつもりなんだろう。私は思わず身がすくんだ。
隣でケンが同じように顔を出させられている。部屋にいるのは大高と金髪の土屋だけで、大男の姿は見えない。
大高は袋を切り抜き終わると、ナイフをベッドサイドの台の上に置いた。
「おもしれー部屋だろ。ここは大人がイケナイ遊びをする場所だ。ここで遊ぶ奴は悲鳴を上げるから防音が行き届いている。騒いでも外には聞こえねーよ。」
土屋が楽しそうに笑いながら言った。
「なんなら、ここにぶら下げてやろうか?」
土屋は壁から垂れ下がった鎖をつついてチャラチャラと音を鳴らす。
「まったく、こんな部屋借りやがって・・・ふざけてんのか!」
大高は苦々しげに毒づくと、私とケンの前にしゃがみ込み、鋭い目つきで見据えてきた。。
「さて、聞かせてもらおうか。なんで俺のことをこそこそつけていたのか。」
ここまで来てしまったら、下手にとぼけても無駄だろう。
けがをした老人のこともある。へたに怒らせてしまうと乱暴されるかもしれない。
しかし、土屋はともかく、大高はすぐに何か乱暴なことをするつもりはないらしい。まずは話をして時間を稼ぎながらチャンスを待つことにしよう。
腹をくくると、冷静さが戻ってきた。
「後を付けたのは、あなたが手配中の強盗だからよ。」
私は相手を真正面から見返すと正直に答えた。
男が顔をしかめる。
「どこで気がついた。」
「ポロニアンモールの喫茶店。お手拭きで顔を拭いたでしょ。あの時、サングラスとマスクを取ったからから気が付いたわ。」
「ちっ」男は舌打ちをした。
「あんなところからつけてきてたのか。」
「なんで子供が手配書の顔なんか知ってるんだ。」
土屋が天井から降りてきている鎖にぶら下がりながら訊いてくる。
「私のお父さんが、あなたたちを追いかけている警察官だからよ。」
私の言葉に二人は驚いたような表情を浮かべた。
「あなたに気づいた私は、後をつけながら連絡を入れたわ。少なくとも巌戸台
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