暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第21話:夢裂かれし者
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吐かんばかりに叫ぶクリス。

 その叫びが響いた瞬間、フィーネはリモコンを操作して電撃を止めると更に透を電気椅子に縛り付けていた枷を外した。

 そして最後にクリスを閉じ込めていた柵が床に格納され彼女を解放した。

 自由に動けるようになった瞬間、クリスは迷うことなく椅子の上でぐったりとした透に近付き彼を椅子から引きずり下ろした。

「透ッ!? 透、大丈夫か? しっかりしろッ!!」

 必死に彼に呼びかけるクリスだったが、透は弱々しく笑みを浮かべるだけで精一杯と言う様子だった。
 その姿にクリスが涙を流していると、徐にフィーネが彼女の髪を引っ張り強引に上を向かせた。

「うぁっ?!」
「今回はこれで勘弁してあげるわ。ただこれから先失敗が続くようだったら、この子がどうなるか分からないからそのつもりでいなさい?」

 それだけ告げるとフィーネはクリスを解放し、ギアペンダントをクリスに向けて放ると悠々と歩き去って何処かへと行ってしまった。
 彼女の後姿をクリスは怒りと恐怖が綯い交ぜになった目で見つめていたが、透の苦しそうな息遣いに彼を休ませるべく部屋へと運んでいった。

「ごめん……ごめんな、透。ごめん────!?」

 その道中、クリスはずっと泣きながら透に謝り続けていた。

 いつだってそうだった。透は、クリスの為にその身を危険に晒し、結果一番被害を受けるのだ。

 そう、8年前からずっと──────



――
――――
――――――



 そもそも、彼──北上 透(きたかみ とおる)とクリスの出会いは幼少期にまで遡る。

 透とクリスは、互いの父親がヴァイオリン奏者として縁があったが故に子供の頃から家族ぐるみで交流があったのだ。

 当時のクリスは声楽家の母親の影響もあってかよく歌う可愛らしい少女であり、そんな彼女と透は非常に仲が良かった。それこそ一緒に居れば共に歌う事が当たり前になるくらいには。

 透とクリスは互いに歌が大好きだった。

 だが、彼の父親である(わたる)は彼に歌ではなくヴァイオリンを教え続けた。息子である透を自身の後継者としようとしていたのだ。

 本当は歌い手となりたかった透だが、さりとて父親の事も愛していたので無碍には出来ず、厳しい指導を受けながらもヴァイオリンの弾き方を習っていた。元々父から才能を受け継いでいたのか、その上達具合は同年代の中では並ぶ者が居ないほどでありアマチュア程度であれば大人でさえ相手にならない程であった。

 そんな時である。クリスが両親と共にNGO活動で南米バルベルデに向かう事になったのは。
 目的は紛争地帯で主に戦災で心に傷を負った人々を歌と音楽で癒すこと…………早い話が慰安だ。
 だが雪音夫妻にとって
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