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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第21話:夢裂かれし者
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いなことにと言うか、奏なら颯人のちょっとした異変にも気付けるかもしれない。

「奏、もし颯人君にちょっとでも異変があったらすぐに鍛錬は中止するんだ。今は大丈夫と言っても、普通なら彼も安静にしていなければならない筈なのだからな」
「あぁ、言われるまでもない。颯人も分かったな? あたしが止めるっつったらその時点でお前大人しくしてもらうからな!」
「分〜かった分かった。それで納得してくれるってんならそれで俺は構わんよ。んで? おっちゃんの家に模擬戦が出来るスペースとかあるの?」
「いや、颯人君と共に模擬戦をするなら本部のシミュレーションルームを使った方がいいだろう。あそこなら奏もギアを纏った状態で訓練できる」
「おっしゃ。んじゃ、早速行こうぜ奏」
「無茶するなよ?」

 繰り返し奏に小言を言われながら、颯人は魔法で二課本部へと転移していった。

 その様子を弦十郎と響は少し心配そうな様子で見送る。

 その際、一瞬だったが響は見た。転移して2人の姿が消える直前、颯人が奏に小突かれた場所を片手で少しだけ抑えたのを。

 今見たものを弦十郎に伝えるべきか迷った響だったが、奏が面倒を見るなら大丈夫だろうと言う信頼と、2人が消えてすぐに弦十郎が響を家に招き入れてしまったので結局この事は響の胸の奥にしまわれ弦十郎に知らされることはなかったのであった。




***




 湖の湖畔にある屋敷。透とクリスが拠点としていたその屋敷の中では、ある種目を覆いたくなるような事が起こっていた。

 2人に指示を出していた女性、フィーネが手元のリモコンのスイッチを入れると、彼女の目の前で椅子に縛り付けられた者に電流が走る。脳天から爪先までを電流が駆け抜ける際の激痛で、椅子に縛り付けられた者は――悲鳴を上げこそしないが――全身から脂汗を流し体は痙攣していた。

 その様子を…………椅子の前で四方を鉄製の柵に囲まれたクリスが、目に涙を浮かべながら必死の形相で手を伸ばしフィーネに止めるよう懇願していた。

「止めろぉぉぉっ!? 頼むフィーネ、止めてくれッ!?」

 クリスの叫びにフィーネは一度スイッチを切り放電を止めた。
 だがそれはクリスの願いを聞き入れたからではない。数秒に一度は放電を止めて椅子に縛り付けられた透を休ませないと、本当に死んでしまうからだ。謂わばこれは、慈悲や許しからくるものではなく苦痛を長引かせる為の処置であった。

 事実、フィーネは透の呼吸が少し安定したと見るや即座に再びスイッチを入れ放電を開始した。

 その瞬間再びクリスの叫びが屋敷の中に木霊する。
 なお、今彼女はギアペンダントを所持していない。力尽くで透を救出されたりしないように、フィーネが事前に奪い取ってからクリスを閉じ込めたのだ
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