中編
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正直言うと、彼の存在は心強かった。一人で尾行していて、不安でなかったと言えば嘘になる。
それに二人ならいざというときの選択肢も増えるかもしれない。本職の刑事だって必ずコンビで行動するものだ。
私は彼の力を借りることに決めた。
「じゃあ取引しましょう。私をサポートしてくれたら、あなたには劇場版フェザーマンの招待券をあげるわ。」
「えっ!・・・な・・なんでそんな・・・」
私の申し出に、男の子は動揺したように顔を赤らめた。
「警察が撮影に協力したとかで、お父さんが招待券もらってきたのよ。でも私は興味ないし、どうしようかと思っていたの。あなた好きなんでしょ。さっき一生懸命見てたじゃないの。」
「い・・いや、その、あれは・・・最近の特撮技術の進歩を確認してただけで・・・別に好きってほどのことは・・・」
「はいはい、劇場の大画面でじっくりと技術の進歩を確認してね。」
必死に取り繕う様が可笑しかった。こんな状況なのに思わず口元が緩む。なんだか可愛い。弟がいたらこんな感じかな。
「ということで、取引成立ね。私はニイジマ マコト。・・・マコトって呼んで。」
「あ、じゃあ・・・ぼ、僕はケンだ。・・・アマダ ケン。」
ケンが虚勢を張るように答えた。
意見がまとまったところで、モノレールは巌戸台駅に滑り込んだ。
男が席を立ち、そしてドアから出る。
後を追うために席を立つと、「ここ・・・僕が住んでいるとこだ・・・」とケンがぽつりと言った。
驚いたことに、その駅は僕が住んでいる『巌戸台』だった。
やつらはここに潜伏しているのか?こんな近所にそんな凶悪犯が隠れていたなんて・・・
でもこの辺なら地理的にも詳しいし、知り合いもいる。もしかしたらこれはチャンスなのかもしれない。
マコトのことが心配だったのはもちろんだが、それにも増してお年寄りを次々狙う卑劣な強盗犯が許せなかった。
僕のお母さんも、突然に理不尽な襲撃に合って殺された。何も悪いことをしていなかったのに・・・
弱い者に危害を加える奴は僕の敵だ。
だから別に映画の招待券が欲しくて協力するわけじゃない。
まあ、もらえたらそれはそれで、うれしいかも・・・だけど・・・。でもそれが目的じゃない。
大高は、また携帯電話で誰かと話しながら、人家の少ない方に歩いていく。僕はマコトと少年チャンプを広げたまま、尾行を続けた。
そろそろ日が傾いてくる。できればあまり暗くなる前に隠れ家に着いて欲しい。暗くなってからでは子供は目出つ。
大高は人気の少ない通りに入っていった。ここだと後をつけているのがばれるかもしれない。
そう思って通りに足を踏み入れず、手前から覗いてみると、大高がとある建物の前で立ち止まった。
2階建てのコンクリート造。道路に面して数台分の駐車場がある。
道路との境にはチェーンが
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