第五章
[8]前話
「実際は一四五ないですからね」
「そうね、どう見てもね」
「あの娘は特に小さいですけれど」
「本当にこの業界はね」
「小柄な娘多いですね」
「それで貴女もね」
「小柄な方ですね」
陽子は自分から言った。
「やっぱり」
「ええ、けれどね」
「声が、ですか」
「その声の質がね」
「お姉さん系の声で」
「そうした役が多くてお姉さん系の声の中でも」
麻里はビールを飲みつつさらに話した。
「貴女はイメージ的に巨乳なのよ」
「巨乳の声ですか」
「だからね」
「胸が多い役が多いんですね」
「それぞれの声のタイプでどうしてもね」
麻里は自分の言葉を続けた。
「演じる役の傾向が決まるところがあるのよ」
「この業界は」
「色々な声出せて色々な役演じられる人もいるけれど」
「うちの事務所だと綾音ちゃんですね」
伊藤綾音である、陽子と同じ事務所の売れっ子声優の一人だ。
「あの娘なんか」
「そうでしょ、けれどあの娘も傾向あるでしょ」
「可愛い女の子がメインですね」
「あの娘は声が可愛いから」
「だからですね」
「そっちの役が多いのよ」
色々な役を演じられる声優だがそれでもというのだ。
「それぞれの人の声でね」
「そうですか」
「そしてね」
「私もですね」
「声がそうしたタイプだから」
「胸が大きい役が多いんですね」
「そいうことよ、まあそれを軸として」
その胸が大きい役をというのだ。
「それでね」
「これからもですね」
「頑張っていってね、少年役もやりたいって言ってたわね」
「はい、そちらも」
「じゃあそういった役の勉強をして」
そしてとだ、麻里は陽子に話した。
「オーディションもね」
「受けてですね」
「そしてね」
そのうえでというのだ。
「声優としてやっていってね」
「そうさせてもらいます」
陽子は麻里にビールを飲みつつ応えた、そしてだった。
麻里とこれからの役について二人でさらに話していった、ビールも肴も楽しみつつそうしたのだった。胸の大きな役のことも含めて。
お色気担当 完
2019・12・22
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