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オゴメ
第三章

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「それならね」
「やっぱり、ですよね」
「何といってもね」
「日本の文学作品には親しんでいないといけないですね」
「そう、だからね」
 それ故にというのだ。
「やっぱりね」
「読んでおくべきですね」
「他にも読むべき作品はあるわ」
 伊豆の踊り子以外にもというのだ。
「けれど間違いなくあの作品はその中の一つね」
「坊ちゃんや人間失格もそうで」
「伊豆の踊り子もね、あと川端康成は」
 良子は作者の話もした、言うまでもなく日本の文学史にその名を残す小説家の一人である。
「他には雪国もね」
「トンネルを抜けると」
「この作品もね」
「読むべきですね」
「ちなみに私は三島由紀夫好きだから」
「金閣寺ですね」
「そう、あの作品も読んだし」
 良子は青空にビールを飲みつつさらに話した、二人共夕食の後で浴衣姿でそちらを楽しみつつ話しているのだ。
「他の作品もね」
「潮騒とかですね」
「あの作品大好きよ、もう大ファンで」
「そこまで言われますか」
「だから今も読んでるわ」
「本当に好きなんですね」
「今度は京都に行きたいわね」
 金閣寺の舞台だったそこにというのだ。
「勿論民俗学のフィールドワークでだけれど」
「それでもですね」
「行きたいわね」
「そしてその時もですね」
「遠山さんもどうかしら」
「よかったら」
 それならとだ、二人で話してだった。
 次の日は三宅島青空のフィールドワークの場所に入った、そこで青空は島を見て回り学んでいったが。
 ある木の下に来た時にだった。
 不意に赤子の鳴き声が聞こえてきた、それで青空は自分と一緒にいる良子に言った。
「今聞こえましたよね」
「聞こえたわ」 
 良子の返事は確かなものだった。
「私にもね」
「そうですよね」
「周りには人は私達以外にいないし」
「これは、ですね」
「オゴメね」
「お話していたそれですね」
「ええ、ただ周りにはね」
 良子は実際に周りを見回している、だが。
 二人以外に人はおらず生きものもだった。
「虫は見えるけれどね」
「他にはですね」
「誰もいないわね」
「本当にそうですね」
「これはね」
 まさにと言うのだった。
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