第二章
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「賊も襲おうとせぬ」
「だからですか」
「左様、だからな」
「それがしはいるべきですか」
「わしは弓矢を持ちお主は槍を持つ」
「それを賊共に見せて」
潜んでいる彼等にとだ、供の者も言った。
「そうしてですか」
「最初から襲われる様にする」
「殿の腕ならお一人でも賊が何人来ても相手ではないですが」
「それでも最初から襲われぬに限る」
「だからですか」
「近いうちに殿は佐渡の賊を成敗し降されるおつもりにしても」
「今はですか」
「我等はあやかし退治で来ておる」
他ならぬ謙信に言われてというのだ。
「そうしておる」
「だからですか」
「そうじゃ、だからじゃ」
それ故にというのだ。
「宜しく頼むぞ」
「それでは」
供の者は主の言葉に頷いてだった、そのうえで。
一旦秘かに話をしていた佐渡の武家の屋敷に入りそこで飯と寝る場所を借りてそこで少し休んでからだった。
夜の佐渡の道に出て二人で歩いているとだった。
本庄の言う通り赤子の声が聞こえてきた、それで供の者は周りを見回してそのうえで兼続に言ってきた。
「夜だってのにいきなり」
「うむ、聞こえてきたな」
「ではこれは」
「話の通りじゃ」
兼続は己の後ろにいる彼に落ち着いた声で述べた。
「ウブが出て来たわ」
「左様ですな」
「怖いな」
「正直に申しまして」
「わしも怖い、しかしな」
「殿のご命令ですな」
「そうじゃ、何戦で敵と戦うのと同じじゃ」
兼続は怯える供の者に笑って返した。
「だからな」
「特に驚くことはないですか」
「お主戦の場ではわしより前に出るではないか」
兼続は供の者の戦の場での働きぶりを話した。
「そうではないか」
「はい、槍を持てばです」
「お主は強いな」
「その時は」
「お主の手にはそれがあるぞ」
他ならぬ槍がというのだ。
「だからな」
「恐れることはないですか」
「全くな、その姿は蜘蛛という」
「でかい蜘蛛ですか」
「その蜘蛛が出てくればじゃ」
「その時にですか」
「どうするかじゃ」
こう話してだった、兼続は平然と前を進んでいった。供の者も彼が勇敢に戦う戦の話をされてしかも手に槍があるのでだ。
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