第三章
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「だからな」
「そう言ってもです」
「ふん、そこまで言うならいい」
川上は妻が頑なだと見て述べた。
「俺一人で行って来る」
「では楽しんでいって下さい」
「じゃあな」
こうしてだった、川上は一人でホテルに入ったが。
そこでは食事も酒もふんだんにそれも和食も中華も洋食も最高のものばかり出た、そして何と秘密のサービスでだ。
美女達も出た、自分だけが贅沢をして女も好きな川上には最高のものだった。
それで彼はホテルにいる間満足してだ、ホテルの支配人に言った。
「またすぐに来るかなら」
「お待ちしています、ただ」
ここでだ、支配人は川上に笑顔で話した。
「当グループは老人ホームも運営しておりまして」
「老人ホーム?そんなの別にいい」
「いえ、この老人ホームは特別でして」
にこやかな顔での言葉だった。
「こうしたサービスをそのまま」
「このホテルのか」
「はい、それを毎日二十四時間です」
「してくれるっていうんだな」
「左様です」
「おい、それはもう天国だろ」
美酒に美食、美女と三拍子そろった暮らしが毎日ならというのだ。
「それこそな」
「ではですね」
「ああ、じゃあそっちを紹介しろ」
老人ホームをというのだ。
「すぐにな」
「わかりました」
支配人は笑顔で応えてだ、そしてだった。
実際に川上にその老人ホームを紹介した、すると彼はその場で独断で老人ホームに入ることを決めた。
そのまま老人ホームに入り家には戻らず会社にも出ることはしなくなった、社会的に完全に引退した。
家族も会社の者も彼がいなくなったことに喜んだ、それは早百合も同じであったがそれでもだった。
志麻にだ、喫茶店でどうかという顔で言った。
「老人ホームに入ってくれてよかったけれど」
「生きていることね」
「ええ、皆そのことがね」
「生きているとね」
「老人ホームから出るとか」
「実際にあるわね」
「だからね」
それでというのだ。
「家族もまだね」
「安心出来ていないわね」
「この世から去らない限り」
つまり死なないと、というのだ。
「本当にね」
「そのことは安心してね」
志麻は早百合に笑顔で答えた。
「絶対にね」
「あそこでなのね」
「死んでくれるから」
「そうなのね」
「あの老人ホームに入って長生きした人はいないのよ」
志麻は早百合に自信に満ちた声で言い切った。
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