第二章
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「皆ね」
「貴女もなのね」
「そう言われると」
「そこは言わなくていいわ」
わかっているからだとだ、志麻は早百合に返した。
「そのことはね」
「そうなのね」
「とにかくね。あの人を知っている人は」
「本当に皆思っているわ」
「早く死んで欲しいって」
「そうね」
「だったらね」
ここまで聞いてだ、志麻は早百合に答えた。
「いい方法があるわ」
「いい方法?」
「ある老人ホームに入れてもらうの」
「老人ホームに」
「その老人ホームは一見高級老人ホームだけれど」
その実はとだ、志麻は早百合に話した。喫茶店で紅茶を飲む動きも疲れが見える彼女に対して。
「その実はね」
「そうした人をなの」
「ええ、わかるわよね」
「わかるわ」
こくりと頷いてだ、早百合は志麻に答えた。
「そこがどういう場所か」
「だからね」
「あの人をなの」
「老人ホームとしてだけでなく老人専用の高級ホテルとしても使われているから」
「ホテルなの」
「そちらの設備もあるから」
だからだというのだ。
「ここはね」
「あの人を」
「そちらに送るのよ」
「それじゃあ」
「老人ホームって言っても」
志麻は早百合にさらに話した。
「行く人じゃないでしょ」
「絶対にね」
「そうよね」
「俺があんなところに行くかと言って」
そうしてとだ、早百合も答えた。
「それでね」
「それじゃあね」
「ホテルの方になのね」
「行ってもらって」
「そのうえで」
「そう、後はそちらに任せれば」
それでというのだ。
「ことは済むわよ」
「それではね」
早百合は志麻の言葉に頷いた、それでだった。
実際に夫にさり気なくホテルに行って楽しむことを勧めた、すると彼はこう妻に答えた。
「じゃあたまにはな」
「そうした場所で、ですね」
「羽根を伸ばすか」
こう言うのだった。
「そうしてやるか」
「はい、それでは」
「行って来るな」
こう言ってだ、川上は実際にそのホテルに行くことにした。だが早百合はあれこれ理由を付けて行かなかった。
そのことについてだ、川上は妻に言った。
「女房は旦那についていくものだろ」
「孫達を見ますから」
「あいつ等をか」
「はい、ですから」
「ガキなんて適当に育つだろ」
家庭を顧みることのない川上ならではの言葉だった。
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