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両手のハンマー
第二章

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「その分か」
「皆仕事がなくなってです」
「失業するかとだな」
「思ってますんで」
「その心配は俺もあるな」 
 工夫長も言った、白人だが学にはあまり縁のない労働者でそれで学問にも縁がなく身体を動かして働いている。
 その彼もだ、人手がなくなるとなのだ。
「それじゃあな」
「はい、勝負させてくれますか」
「一旦失業したらな」
「また仕事先探さないといけないですから」
「それも大変だしな」
「お願いします」
「返事は一つだ」
 笑ってだ、工夫長はジョンに答えた、
「この場合は」
「それじゃあ」
「ああ、頑張れ」
 工夫長はジョンに笑って言った。
「そしてだ」
「はい、俺の両手のハンマーで」
 それぞれの手に一本ずつ持っているそれでというのだ。
「やってみせます」
「それじゃあな」
 こうしてだった、ジョンは機械との掘削の勝負をすることになった。だが工夫長はというと。
 ジョンにどうかという顔でこう言ったのだった。
「お前の気持ちはわかるがな」
「機械にはですか」
「ああ、それこそな」
 こう言うのだった。
「勝てるものじゃないぞ」
「いえ、勝ちますよ俺は」
 ジョンは勝てないと言う工夫長に笑って返した。
「見ていて下さい」
「機械は疲れないしその働きもな」
「人間よりもですね」
「ずっと凄いからな」
 だからだというのだ。
「勝てないぞ」
「いや、幾ら凄くても」
 それでもとだ、ジョンは工夫長に笑って返した。
「人間が造ったものですね」
「機械はか」
「それだと人間以上のものである筈がないですよ」
「人間が造ったならか」
「そうです、それこそ」
 まさにというのだ。
「人間が負ける筈がないですよ」
「機械でもか」
「はい、だから俺も」
「勝負に勝てるか」
「今からそれを見せますよ、そして」
「勝った時はか」
「皆を雇い続けて下さいね」
「俺も約束は絶対に守る」
 それこそと言うのだった。
「だからその時は安心しろ」
「それじゃあです」
「ああ、今からか」
「勝負を挑みます」
 こう言ってだった、ジョンはドリルとの掘削勝負に入った、大きなドリルがジョンの横に来たが彼はというと。
 いつも通り両手にハンマーを持っていた、工夫達はその彼を見て言った。
「ジョン、頼むぜ」
「お前に俺達の仕事がかかってるからな」
「若し仕事がなくなったらな」
「俺達は次の仕事先探さないといけないからな」
「本当に頼むぜ」
「ここはな」
「わかっているさ、俺だってな」
 ジョンはハンマーを持ったまま見守る仲間達に言った。
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