第十一話「外交1」
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アはもう驚かなくなっていた。驚き疲れたとも言うべきか。これ以上驚いていたら死んでしまう。シエリアの本能がそう言っていたように見えた。
「グラ・バルカス帝国の皆さま、我がアルゼンチン帝国へようこそ」
インペリオ・キャピタルの総統府にて外交使節団はアイルサン・ヒドゥラーと対面していた。この国の頂点に立つ男との対面にシエリア達に緊張が走る。まさか自ら来るとは考えていなかったのだ。
歳は40代程であろうか?丁度人生の折り返し地点を過ぎた頃の様で皺が少し見える。それでも一国を預かる者らしい覇気を兼ね備えていた。
「は、初めまして。外交使節団代表のシエリアといいます」
「総統アイルサン・ヒドゥラーです」
お互いの自己紹介を行い早速外交に入る。シエリアは国交の樹立と相互不可侵等を言う。
「……問題はありませんが一つ良いかな?」
「な、なんでしょう?」
「貴国と我が国は遠く離れています。なのに態々我が国と国交を結びに来たのですか?」
シエリアは来た!と感じた。この内容は聞かれるだろうと思っておりどう話すか考えていた。だが、相手の方が国力は上なので包み隠さず言うのが一番という結論に達したためシエリアは覚悟を決めて話す。
「……我が国は転移国家です。そして貴国も転移国家と考えています。違いますか?」
「その通りですよ。別に隠すような事ではないので」
「……国力は貴国の方が上という事が何となくですが分かっています。その為遠い未来敵対するより今のうちに貴国と友好関係を結びたいと考えました」
「……成程」
アイルサン・ヒドゥラーはグラ・バルカス帝国外交使節団の率直な言葉に頭の中で意外だと思っていた。グラ・バルカス帝国の印象ははっきり言ってよくない。傲慢であり武力外交を平気で行うと考えていた。それが自国より技術力が高い事を公式に認めそのうえで態々世界の果てとも言える距離を航行する。アイルサン・ヒドゥラーの中でグラ・バルカス帝国の印象はかなり良くなってきていた。
「……正直に話してくれたことに感謝します。当初は貴国のふるまいから追い返すことも考えましたが実際に会ってよかった」
「……そ、それは良かったです」
まさかここで自国の振る舞いが足かせになるとは思っていなかった。シエリアはここまで来れた事に安堵するのであった。
「さて、貴国の内容ですが……」
「は、はい」
シエリアを含めた外交使節団がアイルサン・ヒドゥラーの次の言葉を固唾を飲んで見守る。次の言葉次第でグラ・バルカス帝国の未来は確定する。
繁栄か?滅亡か?それとも無関心か、属国化か?
そしてアイルサン・ヒドゥラーはゆっくりと口を開いた。
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