三十三 誘い
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ンが案じるのはやはり弟────本当の弟ではないけれど弟のように愛してきたサイのこと。
だが、彼はまだダンゾウの手の内にある。それも己ではない誰かをシンだと言い包め、辛い任務も強要しているという話を聞いて、シンはいてもたってもいられなかった。
だからこそ、ダンゾウがせめて火影に就任しないように、あのうずまきナルトと一時期手さえ組んだのだ。
木ノ葉にある『根』の地下の水柱に眠っているはずの兄が大蛇丸のアジトにいる事実を驚くサイは、シンの話を愕然と聞いていた。
「な、なら、水柱に眠っているのは…」
「…俺に似た、誰か、だろうな」
かつて『根』に忍び刀七人衆の刀を盗みに忍び込み、囚われた水月の兄である満月。
己と似ている容姿を利用し、サイに彼を自分だと思い込ませたダンゾウに、シンは歯噛みした。
「そ、そんな…」
今まで信じてきたダンゾウへの忠誠心が崩れてゆく音を、サイは己の中で確かに聞いた。
呆然と立ち竦む弟の荷物に視線を投げたシンは、昔、幼い自分がサイにあげた物を見つけ、眼を瞬かせる。
両開きから真ん中のページに向かって二人の少年の物語が始まる構成の絵本。
兄と弟が左右から武器を変えて敵を倒すという物語のモデルは、片やサイ自身、そしてもう一人は…。
「あの時の約束、覚えててくれたんだな」
完成は、されてないようだけれど。
それでも自分があげたスケッチブックをサイがまだ持っていてくれた事実をシンは喜んだ。
あの時心を殺せ、とサイに自分が言い聞かせたせいで弟は感情を失ってしまったという。
そうしないと『根』で生き続けられないとは理解しているものの、自分が原因でサイから感情を失わせてしまったことを、シンは悔いていた。
「やっぱり…兄さんなんだね…」
幼き頃、自分と兄のお話を描こうと言って、完成したらシンに見せるとサイは約束した。
当初は水柱に囚われた兄と、目の前の兄。どちらが本物なのか疑っていたサイは、その約束を知っているシンを本当の兄だと理解した。
「ああ。俺はダンゾウに騙されているお前を…『根』から解き放ちたい」
その為に、この失うはずだった命を生き永らえさせたのだ。
シンの決意を込められた視線を受け、サイは思わず顔をそむける。
「無理だよ…だってボクはもう『根』から逃げられない」
そう告げて、『根』の構成員に必ず施される舌の“呪印”を見せる。
その呪印は【舌禍根絶の印】。組織の機密情報、特に長であるダンゾウの情報を喋ろうとすると、身体が痺れて動けなくなるというものだ。
これがある限り、ダンゾウには逆らえないと語るサイに、シンは眉を顰めた。
「ならば、俺が外からお前
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