第三章
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「身体のあちこちが痛くなったり病気になって」
「それで身体も動かなくなってきてね」
「動きが遅くなるんだ」
「そうよ、勿論お母さんもお父さんもね」
「そうなんだ」
「それでソラもなのよ」
ソラは今は二人の傍にいて丸くなっている、やはりあまり動かず寝ている。今は目を開けているが動いてはいない。
「お祖母ちゃんになったから」
「僕から見て」
「そうなったから」
だからだというのだ。
「あまり動かなくなったのよ」
「そうなんだ」
「昔はね、健ちゃんが生まれる位までは」
「動いていたんだ」
「今よりずっとね、もうお家の中を走り回っていたのよ」
「嘘みたいだよ」
「嘘じゃないわ、本当にね」
実際にというのだ。
「そんなに動いていたのよ」
「そうだったんだ」
「皆そうなるから」
それでともだ、母は息子に話した。
「健ちゃんも覚えておいてね」
「皆そうなるから」
「だからね」
こう言ってだった、母はソラを優しく撫でた。すると。
「ニャア」
「何、ソラ」
「ニャア」
「ご飯なのね」
「ニャア」
ソラは鳴くだけだ、だが。
母はそっと立ち上がって彼女のご飯の容器がある場所に向かってその容器にキャットフードを入れた。水もそうした。
健一郎はその母を見て尋ねた。
「ソラの言葉わかるの?」
「わからないわよ」
母は息子に笑顔で答えた。
「ただ鳴き声の調子でね」
「わかるんだ」
「そう、だから今から餌をあげるわ」
こう言ってだ、母はソラにご飯と水を差しだした、すると彼女は嬉しそうにそれ等を食べ飲みはじめた。健一郎は母と共にその彼女を笑顔で見ていた。ソラはその彼等と共にこの時からも長く生きた。その一生は幸せなものだった。
老猫 完
2020・2・27
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