第一章
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老猫
ソラを見てだった、奥村健一郎は母の綾音に尋ねた。
「ソラって幾つなの?」
「十五歳よ」
綾音は五歳の息子の問いに答えた。
「今はね」
「そうなんだ」
「お母さんが十歳の時に貰ってね」
「それからお家にいるんだ」
「そうよ」
綾音は息子に話した、結婚してからも実家暮らしで家族は息子に両親だ。両親と夫の仲はいいが両親が息子を甘やかすことが悩みの種だ。黒髪を短くしていてやや切れ長の大きな目に細く長い眉を持っている。背は一六〇位で鼻が目立つ白い顔である。胸が大きくいつも夫に見られている。今は普段着の白いセーターと青のジーンズという動きやすい恰好で結婚してから外出の時もズボンばかりになっている。
「それでね」
「もう十五歳なんだ」
「健ちゃんが生まれる前からいるのよ」
「僕より年上なんだよね」
「十歳もね」
「じゃあ僕よりお姉さんなんだ」
健一郎は座布団の上で丸くなっているそのソラを見た、薄茶色の毛をしていて毛は少し薄くなっている部分もある。そのソラを見て言うのだ。
「ソラって」
「いえ、お祖母ちゃんよ」
「お祖母ちゃんなんだ」
「そうよ、猫は人間より早く歳を取るから」
母は息子に微笑んで話した。
「もうね」
「ソラはお祖母ちゃんなんだ」
「そう、それでね」
そのうえでというのだ。
「ソラは健ちゃんのお姉ちゃんじゃなくて」
「お祖母ちゃんになるんだ」
「最初はお母さんの妹だったの」
母は自分がはじめてソラと会った時のことを思い出しつつ我が子に話した、その時彼女はまだ小学生でソラは掌に乗る位の大きさだった。
「それがね」
「お母さんのお母さん?」
「ええ、もう一人のお祖母ちゃんね」
こう息子に話した。
「今はね」
「そうなんだ」
「もうお祖母ちゃんだから」
母はこうも言った。
「あまり動かないでね」
「いつも寝てるんだ」
「そうよ、だから優しくしてあげてね」
「うん、お年寄りにはだね」
「誰にでも優しくしなさいっていつも言ってるわね」
自分が夫と共にいつも息子に教えていることも話した、高校を卒業してすぐに夫と結婚してそれから出来た彼に。
「だからね」
「ソラにもだね」
「もう身体も弱ってるから」
「余計になのね」
「そうしてあげてね」
「そうするね」
健一郎もこう応えた、そしてだった。
健一郎も母も父もそして祖父母もソラを家族として優しく対していた。そうしていたがソラは高齢で。
あまり動かない、いつも暖かい場所で丸くなっている。時々動くがその動きもゆっくりとしている。
健一郎はそのソラを見て母にこうも言った。
「ソラって他の猫と違うね」
「何が違うのかしら」
「あまり動かないね」
言う
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