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受けた傷の分だけ
第四章

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「その分ね」
「その分なの」
「幸せになってもらわないとね」
 こう言うのだった。
「よくないわ」
「どんな子でも幸せにならないといけないのよね」
「お母さんいつも言ってるわね」
「うん、それでなのね」
「この子もね」
 そのミリーを見つつ娘に話した、見ればミリーは彼女の膝の上でゴロゴロと喉を鳴らしながら丸くなっている。
「幸せになってもらわないとね」
「駄目だから」
「これからもね」
「この子は余計になのね」
「辛かった、受けた傷の分だけね」
「幸せになってもらうのね」
「私達でそうしていきましょう」
 こう娘に話した。
「是非ね」
「じゃあこの子幸せなの?」
 彩はミリーを撫でながら母に尋ねた。
「そうなの?」
「喉鳴らしてるでしょ」
 母は娘の問いにこのことから話した。
「そうでしょ」
「ええ、ゴロゴロってね」
「猫は機嫌がいいと喉を鳴らすでしょ」
「そう言われてるわね」
「つまりね」
「この子は今幸せなのね」
「そう感じているから」
 だからだというのだ。
「喉を鳴らしているのよ」
「そういえばうちに来た時ずっと鳴らしてなかったわね」
「一度もね」
「隠れてばかりで。けれど今は」
「そう、幸せなのを感じているから」
「喉を鳴らしているのね、じゃあこの子がずっと喉を鳴らせる様にね」
 彩はミリーに優しく触れた、家にいた時はその姿を見ただけで逃げ出して隠れて震えていたが今は違っていた。
「ずっと優しくしていけばいいのね」
「そうよ、いいわね」
「うん、そうしていくわ」
 彩は母に笑顔で応えた、そうしてだった。 
 またミリーを撫でた、ミリーはその彩を一切怖がらない、その顔を見上げてニャアと鳴いて丸くなっている。そのうえで喉を鳴らし続けていた。


受けた傷の分だけ   完


                 2020・2・27
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