第二章
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「冬はこれがまた有り難いよ」
「風邪の防止になるしな、今晩は特に冷えるからな」
「マスク外さない様にしろってんだね」
「それじゃあ駄目か」
「優しいね、その優しいところが好きだから」
亜美は周防のその言葉に微笑んで応えた。
「あーしあんたと付き合ってるのよ」
「そうか?」
「そうだよ、じゃあ今日はデートだけだね」
「手はつないでいいな」
「それは前からしてるしね、じゃあ寒いから手袋ごしでね」
亜美から手を差し出してきた、周防はその手を握った。そうして二人で共に妖怪の時間のデートを楽しんだ。
このデートから数日後自宅である寺の天井裏でそれぞれシーツで包んだ数枚の毛布にくるまって寝ている周防のところに亜美の友達の雌の猫又である菊池百合が亜美の自宅であるテナント募集中の店の中から来てまだ毛布の中にいる彼に笑って言ってきた。
「起きてるかい?」
「寝てるよ」
周防はベッドの中で百合に答えた。その大きな一つ目を毛布の中から二本足で立ちギャル風の服を着ている尻尾が二本ある白猫に向けつつ。見ればメイクも派手だ。
「まだ夕方だぞ、遊ぶ時間じゃないぞ」
「妖怪はね」
「だからお前と遊ぶことはしないからな」
「遊びに来たんじゃないよ、あんた亜美に言ったらしいね」
「暖かい様にマスクは取るなってか」
「いいこと言うね、男はやっぱり優しさだよ」
百合は自分が持ってきたケーキを食べつつ周防に言った。
「優しい男が一番恰好いいんだよ」
「言うものだな」
「これでも経験豊富だからね、そのあんたにご褒美があるよ」
「何だよ、一体」
「ケーキ二個あるからさ、二個あんたにやるよ。今日デートだろ」
百合はそのことも知っていて周防に言うのだった。
「さて、二個あるケーキをあんたはどうするんだい?」
「そうか、じゃあ一個はあいつにやるな」
「一個ずつだね」
「駄目か?」
「正解だよ、じゃあ今日のデートを仲良くね」
こう言ってだ、そしてだった。
百合は周防の家を後にし周防は日が落ちると毛布から出て亜美とのデートにケーキを二個持って行って一個ずつ食べた、その後の網がマスクを取っての大きな口でのキスは実に甘くまさに恋のキスの味だと二人で笑って話した。
妖怪のキス 完
2020・2・26
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