第一章
[2]次話
妖怪のキス
妖怪達にも四季が影響し彼等はその中で暮らしている、奈良県奈良市に住んでいる一つ目小僧の周防信一郎もそれは同じである。
彼は服をかなり着込んでそのうえで真夜中の人がいない奈良の街中を自宅であるとある寺の天井裏から出て恋人の口裂け女の沢近亜美と共に歩いていた、所謂デートだ。
そのデートの中で周防はマスクをしている亜美に言った。
「お前今もマスクしてるな」
「口裂け女だからよ、これ取ったら」
どうかとだ、亜美は周防に話した。
「あーしの口耳まで裂けてるよ」
「それ見せて人間驚かすよな」
「それがあーしの趣味だけれど」
それでもとだ、亜美は周防にさらに話した。
「その時の為にこうしてね」
「普段からしてるんだな」
「そうよ、っていうかあーし達付き合って二十年だけれど」
「ああ、そんなになるか」
「そろそろ恋の次の段階に入らない?」
「次って何だよ」
周防は亜美に問い返した、見れば二人共着ている服は人間のものと全く変わらない。周防はジャケットにジーンズ、亜美はコートにズボンだ。冬の真夜中なので二人共厚着だ。帽子も被っているし手袋も着けていてジャケットやコートの下にはセーターや厚い生地の服という恰好だ。その厚着で武装して夜の奈良市街を歩いているのだ。
「一体」
「それはキスとか」
「キスか」
「それしない?」
「そうだな、じゃあ次のデートの時にな」
「今じゃ駄目?」
「今は寒いからな」
それでとだ、周防は亜美に答えた。
「だからな」
「しないの」
「お前もマスクしてる方が温かいだろ」
「実はその分口のところがね」
亜美もその通りだと答える。
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