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雲に隠れた月は朧げに聖なる光を放つ
第十一話 番人の特権と戦闘訓練
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「うん‥‥ハジメと同じ感じだ」

ここ二日で、シアの魔法適正を見てみた。が、残念ながら無いに等しかった。

「でも‥‥一つ使える武器は見つかったな」

「身体能力強化でしょ?」

そう、唯一まともに使えた魔法が、身体能力強化だ。掛けられる倍率は現時点で俺の半分といったところだ。

「とりあえずシア。お前には格闘戦を教えるわ。攻撃は俺が、防御はオスカーが鍛えさせてもらう」

「は、はいですぅ!」

「じゃあまずは攻撃な。まず兎人族の特徴として、索敵能力と隠密性はとても高いからそれを使った前提で進めてくぞ」

「えっと‥‥つまり、奇襲攻撃前提ってことですか?」

「そういうこと。で、基本の攻撃は上半身で行うんだ。例えば‥‥‥」

俺はオスカーに作ってもらったサンドバッグ人形の正面に立つ。

「オスカー、動かしてもらってもいいか?」

「オッケ。行くよー」

「例えば相手から近づいてきたとする。そしたら‥‥‥」

俺は近づいてきた人形を軽く腕を使って躱す。

「最初は躱すことから始める。そして二撃目から攻撃するんだ」

「なるほど‥‥‥やってみてもいいですか?」

「あ、俺相手だからな」

そう言って組手を始めた。

「俺がストレートに突っ込んできたら‥‥‥『ヒョイッ』そうだ。そんな感じで避ける。それじゃあ反撃方法を教える。反撃方法の一撃目は、武器がないなら手刀。あるならその武器で軽く弾き飛ばすに留めるんだ」

「なんでですか?」

「いきなり重い一撃をしようとしても躱されたら意味がない。それならば軽く牽制して体力を削った方がいいんだよ」

その後も俺は護身術を教える。

「‥‥‥とまあ、こんな感じだ。それじゃあ次は防御の練習な。オスカー頼むわ」

「うん。それじゃあ行くよ?」

その後、シアの悲鳴が樹海中に響き渡ったとかなんとか。

ーーーーーーーーーーーーーー

訓練を始めてから十日後‥‥‥。

結論から言おう。シアはとても優秀な戦士に育った。本気のシアは、だいたいハジメの六割方の力に匹敵するようになった。

「あ、あの‥‥コウさん。今日で最後ですよね?」

「そうだな。卒業試験と行こうか」

「卒業試験‥‥分かりました。それじゃあ、合格したら‥‥‥」

「うん?ああ、何か見返りが欲しいのね。それじゃあ‥‥‥旅に着いてきても良いというのは?」

「コウさん‥‥‥‥!」

「あくまでも『合格したら』だ。合格条件は、俺の魔法攻撃をくぐり抜けて一撃でも与えたらにしよう」

「分かりました!」

「俺も能力はフルで行使させてもらう。お前なら時止で俺が移動しても場所を突き止められるだけの索敵能力がある。頑張るんだぞ」

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