第二章
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いい部屋だがその分家賃が高かった、敷金や礼金は普通にしても。
しかもだ、場所は確かに会社の近所と呼ぶには少し微妙だった、正直三咲の給料ではいささか高い家賃が特に気になった。
その部屋を紹介して社員は話した。
「他のお部屋もあります、安いお部屋も」
「それでもですか」
「この辺りではないです」
「この辺りでは、ですか」
「そう言っていいお部屋は」
まさにというのだ。
「ここしかないです」
「そうですか」
「このお部屋でもいいですか」
社員は三咲にあらためて問うた。
「それならです」
「そうですか、では」
三咲は遠くてもいい、そう決意してだった。
遠くなるが安い部屋にした、このことには考えもあってだった。
それで契約し即座に引っ越した、それから会社の近くの通勤の路にある空き地の方に行ってであった。
そこにいる首輪のない汚いチワワに声をかけた。
「ねえ、こっちに来て」
「クウ?」
「まだいてよかったわ」
三咲はチワワにまずはこう言った。
「本当に。昨日はいてご飯あげられても明日は保健所なんてこともあるから」
「クウ」
「もう引っ越したから」
それでというのだ。
「今から行こうね、食べものもあるよ」
「クウ」
チワワは小さい声で鳴くだけだった、だが三咲は持ってきた動物用のケースにそのチワワを入れて。
自分の新居に向かった、そうしてそのチワワを奇麗にして獣医に見せて駐車等を打ってもらってだった。
彼と共に暮らしはじめた、そして自分の新居に同僚達を呼んで引っ越し祝いのパーティーをしつつそのチワワを彼女達に見せて言った。
「名前はタロウにしたの」
「雄なの」
「そうなの」
「ええ、どうも捨て犬らしくて」
それでというのだ。
「ワクチンとかは打たれていたの」
「誰が捨てたのかしらね」
「無責任な人がいるわね」
「折角飼ったのに捨てるとか」
「最初から飼う資格ないわね」
「そうよね、同じ命よ」
三咲はそのタロウを見つつ同僚達に話した、新居は広くかつ清潔で実に暮らしやすいものの感じである。
「だったらね」
「それならよね」
「大切にしないとね」
「人間と同じ命だから」
「そうしないとね」
「私もこの子を見付けて」
それでとだ、三咲はビールを飲みつつ話した。
「何とかしなくちゃって思って」
「それでなのね」
「ペット飼えるマンションに移ったの」
「そうしたの」
「助けられる命は助ける」
三咲は普段の穏やかな声であるが真面目な調子で言った。
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