第三章
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「ここは」
「そうよね」
「ジョンの目を取るか命を取るか」
「どちらかよ」
「手術をすれば治るが」
「ジョンは死ぬかも知れないわ」
「そして手術をしないとジョンの目は治らない」
「そうよ、けれどね」
妻は夫に元気なく答えた。
「ジョンは助かって」
「耳と鼻で生きていくか」
「私達の助けでね」
「ジョンが死ぬなんて絶対に嫌よ」
娘の妙が泣きそうな顔で言ってきた。
「それは」
「それはお母さんもよ」
「何があっても。けれどジョンの目が見えないままなのも」
このこともというのだ。
「嫌よ」
「どちらもよね」
「どうすればいいの?」
「二つに一つか。けれどな」
ここで父が言った。
「ジョンが確実に生きられるならな」
「それならなのね」
「手術をしない方がいいか」
こう言うのだった。
「そちらの方が」
「見えない分はなのね」
「皆でやっていこう」
「私達がジョンを助けて」
「家族だ、困った時はお互い様だ」
夫は妻に決意した顔と声で言った。
「そうしよう」
「それじゃあ」
「妙もそれでいいな」
父は娘にも顔を向けて問うた。
「ジョンを助けてくれるな」
「目が見えない分なのね」
「まず階段が駄目だ」
家のそれがというのだ。
「それで小屋を階段を使わなくて外に出入り出来る家の中社長に移してな」
「そこからお散歩するのね」
「ご飯もそこであげるんだ」
これまでジョンとリリがいた庭からというのだ。
「そうするんだ」
「そうするのね」
「そして見えないことを意識してな」
ジョンの目がというのだ。
「散歩の時も車に気をつけて声をかけていくんだ」
「ジョンは耳は大丈夫だから」
「ああ、耳と鼻が大丈夫だからな」
それでというのだ。
「そちらだ、あと触ることもしてな」
「これまでも触ってるよ」
「これまで以上に触ってだ」
そうしてというのだ。
「ジョンが危なくない様に、そしてこちらに気付いてくれる様にな」
「していくのね」
「とにかくこれからはジョンに声をかけていくんだ」
これまで以上にというのだ。
「そうしてだ」
「ジョンを助けていくのね」
「そうするんだ、いいな」
「うん、それじゅあね」
「リリも宜しく頼むな」
今は自分達の傍にいるもう一匹の愛犬にも声をかけた、リリはきょとんとした顔で見ているだけだ。だが。
家族は早速ジョンとリリの小屋を駐車場の空いている場所に置いてジョンが階段を行き来しないで散歩に出られる様にした。
「目が見えないと階段は上り下りしにくいな」
「凄く危ないよね」
娘は父の言葉に応えた。
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