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何処かが悪くても
第三章
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「この子の名前を決めて」
「そうしてだな」
「これからはね」
「私達の家族としてね」
 そのうえでというのだ。
「一緒にいましょう」
「そうだな、獣医さんも言っていたしな」
「目が見えなくても命があるって」
「命があるなら大事にされるべきだとも」
「その通りね」
「私だって同じだから」
 由加里はここでも自分の脚を見た、そのうえで両親に応えた。
「脚が悪いことも目が見えないことも同じよね」
「そうだな、本当にな」
「同じね」
「それじゃあな」
「この子も家族として一緒にいましょう」
 こうしてだった、犬は正式に家族になった。名前はジョンとなりそうして共にいることになった。そしてだった。 
 由加里はいつもジョンと一緒にいる様になった、目が見えないジョンはトイレはよく失敗し何かにぶつかったりこけたりすることも多かった。両親が散歩に連れて行くがそうした失敗が多かった。由加里は散歩にはいつも車椅子調子がいい時は杖で歩いて自分の散歩という意味もあって一緒だったが。
 ジョンは最初失敗する度にびくりとした、だが。
 由加里はそのジョンにいつも微笑んで声をかけた。
「大丈夫だよ」
「クウン?」
「そんなことで誰も怒らないから」
 こう言うのだった。
「私達は」
「そうよ、絶対にね」
 リードを持っている母も優しく言う。
「そんなことしないから」
「だから安心して」
 こう言うのだった。
「そうしたことはね」
「落ち着いてね」
 母はこうも言った。
「お散歩していきましょう」
「それじゃあね」
「クウン」
 ジョンはいつもそんな二人に信じられないという顔を向けた、これは父がリードを持っている時も同じだった。 
 だが次第にだった、こうしたことが続いている間に。
 ジョンは失敗してもぶつかっても怯えなくなった、そしてだった。
 家の中で部屋の隅におらず家族の傍にいる様になった、特に由加里の傍に。その彼を見てであった。 
 由加里は微笑んでジョンに言った。
「ジョン、ずっと一緒よ」
「家族だからね」
 母が娘の言葉に応えた。
「この子は」
「何処かが悪いなんて誰でもで」
 それでというのだ。
「私は脚、貴女は目というだけよ」
「ええ、私も腰が悪いし」
 母は娘に少し苦笑いになって話した。
「それでお父さんもね」
「神経痛よね」
「そうよ、私達は後天的なものだけれど」
「皆ね」
「何処か悪いわ」
「そう、だからね」 
 それでというのだ。
「家族の誰かが何処か悪いなら」
「皆で補っていけばいいのよ」
「だから私はジョンの目になるわ」
 由加里はこうも言った。
「そうするわ」
「そうして一緒にいるのね」
「そうしていくわ、ずっとね」
「そうね、それはね
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