闇の化身との邂逅
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“他の大人たちに比べたらはるかにマシだ”
その言葉を自分の中に隠して、ハルマは立ち上がった。忍になる事は通過点に過ぎない。ここで立ち止まるつもりはない。
「次、千手ハルマ!」
卒業試験終了後。合格した子供達が親と何かを話している中、ハルマは左手に額当てを握り、その場を後にしようとしているようだった。しかし、ダンゾウが行く手を阻む。ハルマに会う為にわざわざアカデミーまで来たのだ。目的を果たさなければ来た意味がない。
「……お前が千手ハルマか?」
「そうですけど、誰ですか?」
ダンゾウは自分を見上げているハルマを見る。ハルマは世間的には落ちこぼれのレッテルを貼られた少年だ。
この少年が本当に落ちこぼれという名の仮面を被り、多くの大人たちを欺いてきたのか。それとも、噂通りの少年なのか。それを確かめるべくダンゾウはハルマにある問いを投げかけた。
「落ちこぼれ……そう言われているお前に一つ問いたい」
「難破船に同胞である十人が乗っている。その中の一人が性質の悪い伝染病に罹ってしまった。このまま生かしていると他の九人も病に罹って死んでしまう事になる。お前がこの船のリーダーならば、どのような判断を下す?」
これはかつてうちはイタチにしたのと同じ問いだ。その時、彼は一人を殺して他の九人を助けると答えたと記憶している。
「……分からないです」
「そうか……分からないか」
この答えだけならば期待外れだったと感じ、噂に違わぬ少年であったと、切り捨てていただろう。しかし、ダンゾウはハルマの目が一瞬だけ鋭くなったのを見た。仮面の中に潜んでいる本心は果たしてどこにあるのか。それはダンゾウにさえも分からないが、これではっきりした。彼は落ちこぼれなどではない。忍の素質を兼ね備えた少年であると。
「また会える日を楽しみにしている」
だが、それはまだ開花していない。ならば誰かが導く必要がある。
「ハルマの忍の才をこじ開けるのはワシの役目か」
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